TRPG覚書
◆「TRPGのためのイメージトレーニング」−2003/12/23
僕は自然といつもやってるんですが、TRPGをするにあたって事前にイメージトレーニングをするのは極めて有効です。イメージトレーニングというのは、例えばスポーツ選手が自分のプレイを事前にイメージして(基本的にうまく行った場合のイメージをする)実際のプレイでリラックスしてよいプレイが出来るようにする、というような活用のされかたをしています。TRPGの場合にはもう少し踏み込んだ活用法があるのですが、以下にイメージトレーニングの活用法・効用を書いて行きます。
1)自信を持つ・リラックスをするetc...
とりあえず最初にイメージをするときには「それがうまく行った時のイメージ」をイメージするようにするのが良いと思われます(気分も良くなりますし)。何か先の読めない微妙な流れに入ってしまった時には、自信を持って冷静に行動して行った方がうまく勢いでスルー出来たりすることもよくあります。2)先が見えるようになる
TRPGのセッションというのは例えて言えば毎回毎回が全く先の見えない見知らぬ道を歩き回っているような感じなのですが、事前にイメージしていれば、それは「見知らぬ道を歩く」
のではなく
「知っている道を歩きなおしている」
に変わります。そこまで行かなくとも、
「地図も無しにめくらめっぽうに歩いている」
のが
「地図を持ちながら方向を確認しながら歩く」
に変わります。そして、ある程度先が見えるようになっていれば、ペース配分というものも考えられるようになります。つまり全体の行程がこれくらいでいま半分くらいだとしたら、あと半分これまで費やしたのと同じくらいの時間消費で結末までたどり着けるということがわかります。
2)シナリオの問題点が事前にわかる?
イメージトレーニングをするとそのシナリオ/セッションの問題点が事前にわかるという利点があります。例えば依頼型シナリオで最初に依頼の報酬の交渉や、情報提供を考える場合。a)どのようなシチュエーションから依頼されるのか?会話展開はどうなるか?
b)どんな情報をPCに与えるか?どういう会話展開でその情報を渡すか?
c)PCが当然抱くであろう疑問点は何が考えられるか?
d)報酬の交渉はどうするか?とか考えることがあります。よくあるパーティー制で酒場で依頼を受ける場合
a)シチュエーション
酒場で依頼を受けることになるが大まかに以下の3パターンが考えられる
・PCが酒場の主人に話を聞いて依頼する
・酒場にやってきた客がそこにいるPCに依頼する
・酒場に張り紙がしてある
etc...☆酒場で発生しうるイベント/トラブル(PCが勝手にやる場合とイベントとして起こす場合がある)
・食事:生活感を出す演出に使える。シナリオに絡められるなら印象付ける演出に使えるかもしれない
・酒・飲み物:生活感を出す演出に使える。シナリオに絡められるなら印象付ける演出に使えるかもしれない
・けんかが起きるかもしれない
・酔っ払って倒れるかもしれない
・食事に毒が混ぜられるかもしれない(理由は?)
・酒場内で金品をすられるかもしれない(理由は?)
・吟遊詩人がシナリオにまつわる歌を歌うかもしれない
・主人、ウェイトレス、ウェイターなどが魅力的な人物かもしれない
・酒場の客に誰か魅力的な人物がいるかもしれない
・何らかの天変地異/戦争/戦闘などで酒場がいきなり破壊されるかもしれない
etc...☆発生し得る問題点
・PCが酒場の主人に話を聞かないとか客が依頼してきても無視するとか張り紙があっても気付かないとかした時はどうするか?
予防策:
対症療法:・イベントを起こしてそこで時間を消耗しすぎて、あとの展開が消化しきれなさそうな場合はどうするか?
予防策:
対症療法:・PCが犯罪を犯してしまった場合はどうするか?
予防策:
対症療法:・PCが死亡してしまった場合はどうするか?
予防策:
対症療法:
etc...
b)依頼内容
☆発生し得る問題点
・依頼内容がPCの主義主張にそぐわない場合はどうするか?
予防策:
対症療法:・依頼内容をPLが理解できなかった場合はどうするか?
予防策:
対症療法:c)質疑応答
☆発生し得る問題点
・PLが何も質問してこなかった場合はどうするか?
予防策:
対症療法:・設定外のことを聞かれた場合はどうするか?
予防策:
対症療法:・依頼主の名前、年齢、生活環境、家族構成、主義、戦闘能力etc...は何か?
・なぜPCに依頼するのか?
・目的達成のための手段はどうすればいいのか?また、その情報はどこまでその依頼者は知っているのか?どこまでPCに公開するのか?
・目的達成のための手段として依頼主が考えている案よりも効率的な別な案は存在するか?それをPLが思いつく可能性はどれくらいか?
d)報酬
・いったい、いくらならPCは依頼を引き受けそうか?その根拠は?・「お金」で動かないタイプのPCへの報酬はどうすればいいか?
・報酬を特定PCのみが隠匿した場合は対処するか?
etc...
3)まとめ?
まあ2)に書いたようなことを頭の中ですべてシミュレートしてみてください。1回のセッションですべてのシチュエーションが発生することはありえませんが、長くやってると大体どのシチュエーションにも遭遇する機会があるでしょう。遭遇した時におたおたするよりも、あらかじめ予防策、対処法を考えておいた方がそうしないのと比べてはるかに早くリアクション出来るようになります。
ずいぶん前から思っているのだが、最近の若い人の中には思考力が欠如している(というか、思考することを放棄している)人が多いと思う。なーんて言うと年寄りくさくてしょうがないのだが(^^;。それはさておきTRPGをプレイする現場においても同様に思考を放棄しているPLを見かけることが多くなった。あるいは、思考しようとするのだが普段から「考えること」を身に付けていないため考えようとしても何も思い浮かばないということもあるし、何とか何かを思い付いたとしても出て来る結論がまったく的外れということもよくある。
僕自身も、いろいろ変なことは考えていたので自分内での思考力というのは養われていたと思うのだが、現実に即して考えて何らかの発言をするとかそういう能力が明らかに欠けていた時期があった。例えばマスターをするとうまいけれどもPLをすると下手な人というのもその類と言っていいだろう。自分自身の思考空間は構築できるが、外部の情報から現実に即した思考空間を構築することが出来ない(厳密には「構築するのに時間がかかるためリアクションが間に合わない」と言うべき)のである。
この辺の「考えて発言できるようになる」/「そもそも考えようとしない/考えてみるが何も思いつかない」の間には明確な壁がある。そういえば最近は「バカの壁」というタイトルの本がちょっと売れたりなんかしていたのだが、そんなような感じだろうか(読んでないのであてずっぽうである)。言っても通じる人間と、いくら言っても通じないとか改善されない人間がいる。ただ、これを「壁」と言って放置するといつまで経っても成長せずそのまま一生を終えるとか不幸?なことになるので、その「壁」を乗り越える方法について書こうと思う。厳密には「思考力」というのは「運動能力」とまったく同様で人それぞれの特性があるため、同じことをしても効果は出ないかもしれない。そのときはあしからず(w。
1.思考能力は鍛えないと衰える
まず、考える力というものは、使わないと筋力がどんどん落ちていくのとまったく同様に、働かせることなく放置し続けるとどんどん衰えていく。科学的に言うと、脳内のニューロンの伝達組織が働かせていればその部分はどんどん円滑に情報伝達できるようになり、思考スピードも上がっていくが、そうでないならどんどん経路が細くなって(あるいは消滅して)思考スピードが低下していく。あなたはここ数年何かについて、真剣に、且つ、論理的に筋道立てて考え実行したことがあるだろうか?
もしないとしたら、あなたの思考力は極めて低下していると言っていいであろう。2.何でもいいから一つ考えてみる
何かテーマを一つ決めよう。それについて考えてみる。まず、考えるためには基盤となる情報が必要である。なので「自分がよく知っていることについて考えること」は比較的容易である。すでにその情報は得ているので、情報を得ることについて考える手間が省略される。そうでない場合には面倒でも情報収集しないことにはまず、考えることが出来ない。ちなみに情報収集については「類型化」によってある程度端折ったり高速化が可能ではある。例えば「人が死んだ、悲しい」ということについて考えるのであれば、必ずしも当事者の「誰が死んで、その人についてどんな思い出があって、どんな風に悲しいのか」ということについて知らなくても、自分の実体験に照らし合わせてある程度置き換えが可能である。
次に、知り得た情報から問題点を洗い出す必要がある。実体験のある話であれば「ここで困ったんだよなあ」と思い返してそこを問題として取り上げることが可能であるが、そうでない事柄については想像するしかない。ある程度はそれでも推測可能である。類型化によって「同様の局面が発生するのだが、以前体験した同様の問題が発生していないか?」と考えることが可能だし、論理的筋道を考えていって「ここで論理的矛盾が発生するのだが、これは実際問題となっていないか?」を考えることができる。一番いいのは当事者に話を聞くことであるが、当事者はいるとは限らない。
3.結論だけ聞いて思考過程を聞かないと思考力は育たない
よくいるのだが、問題提議をし、自分では何も考えず、人にその結論だけ聞いて満足する人がいる。実際「思考が出来るかどうか」というのは、頼りになる人が誰一人いないときに、自分だけで考えることができるかどうか?というのが本当の思考力である。だからといって聞いてはいけないわけではなく、考える上で必要な基盤情報は聞かなければわかるはずもないし、その道に通じた人がいかなる思考過程を経てその結論に至ったのか?という思考過程を聞くのは大変勉強になる。その辺を理解すれば、自分ひとりになった時でもある程度同様の思考ができるようになる。結論だけ聞いている場合には、自分ひとりになった時には何も結論を下すことが出来ず、占いとか託宣のように、同じことを猿真似するしか出来ない。
まあ、時間的余裕がないときには結論だけわかればいいのだが。4.自分の思考速度を把握する
「考えても何も思い付かない」というときはよくあるが、実際はそれは違う。単純に「思考速度が遅いため、規定時間内に結論が出ないだけである」というのが正しい。慣れない思考をしようとするので現状に思考スピードが追いつかないだけなのだ。で、思考スピードが遅いのを「考えることが出来ないのだ」と思い込んで放置するといつまで経っても思考力が育たないので、とりあえず自分のペースできちんと最後まで考えてみるといい。
初めて思考するとき、例えばまともにものを考えたことがないまま10年とか経って久しぶりに考えるときには苦痛が伴う(笑。足の怪我をして足が動くようにするためのリハビリが苦痛を伴うのとまったく同様に、思考力を再生するためのリハビリにも苦痛が伴う。それが苦痛だからといって放置し続けるといつまで経っても成長はない。苦痛を乗り越えて自分なりの結論を下せるようになって初めて思考できるようになる。いずれにせよ、自分の思考速度がわかっていれば、それまで結論を待ってもらうよう言うことが可能になる。思考速度というのは(限度はあるが)必ずしもそんなに早くなくてもかまわない。速度よりもより正しい結論の方が重要な時の方が多いし。
5.状況整理する
よく何かを考えようとしていて、何を考えたらいいのかわけがわからなくなることがある。そういうときはとにかく一度状況整理してみるのがいい。状況整理する方としては人それぞれだと思うのだが、僕の場合はとにかく箇条書きにして全体を眺めてみる。何を箇条書きにするかについては以下の2つある。<1>問題に関係ありそうな情報をすべて列挙し、それを関連する内容に沿って分類する
<2>現状の問題点をすべて列挙する。それぞれの問題点の対処方法を<1>であげた情報に基づいて書き込む6.結論の出る瞬間
結論の出る瞬間というのは人それぞれ違う。考えるのが好きな人はその瞬間の解放感が好きなのだ。重要なのは、結論が出たと思ったところからその結論の正当性を検証することである。得られた情報を元に様々な不利なケースについて考えること。すべてについてOKであればその結論は妥当である。不完全な結論でも「どういう条件を揃えればその結論は妥当になるか?」を考えれば良い。現実にそのように条件を変えればいいのだ。TRPGのセッションというのは基本的に「不完全な結論を正当化するための条件を整えるためのものである」と言える。7.思考速度を上げる方法
方法は2つある。<1>とにかく思考力を鍛える訓練を続けて慣れによって思考速度を上げる
これはもう場数を踏むしかないのだが、誰でも努力によって能力向上することが可能である。<2>類型化・論理的思考によって展開を先読みし、思考の貯金を作る。先読みした思考の出発点からさらに思考をさらに進めることで思考速度を上げる
これは多少博打の要素が入って、先読みで考えたことが自分の知らなかった前提条件によってまったく覆される可能性がある。外れたときは運が悪かったと思って諦めるのがいいだろう。まあ、考えたことが再度役立つ局面もやってくるかもしれない。論理的飛躍は経験によって精度を上げることが可能である。飛躍までの足場固めも空いた時間に随時行っていくことが重要である。具体例はシャーロックホームズの本でホームズがワトソンに依頼人についての推理を吹聴するところなんかみればわかりやすいだろう。最後に
何かビジネス書の啓蒙文みたいになって何だかだが(笑)、TRPGというのは思考の遊びなので、ある程度参加者にも思考力は求められるものだ。説得ものなら、きちんと筋道立てて論拠を持って説得してもらわなければゲームにならないし、戦闘でも基本的なルールを把握して確率計算なりコンビネーションなりメリット、デメリットなりを考慮してくれないとゲームにならない。ゲームにならない行動というのは、他のセッション参加者の楽しみをぶち壊しにする行動となるというのを自覚してもらえるといいと思う。本当に「他の人も楽しむことを考えてプレイしよう」ということであれば、そのTRPGの「ゲーム」としての面白さとは何かを理解して、それに沿った思考をしてプレイする必要があると考える。なぜなら、「ゲームとしての面白さ」はTRPGの面白さの中の重要な要素の一つであるからである。もちろん、それ以外の要素もあるわけだが。まあ、人によって「合う・合わない」という限界はあるので、自分が楽しめそうにないどうにも苦手な領域の話/ゲームは避けるのがよろしいと思う。その前に「自分は何が合っていて、何が合っていないか」を把握するのはもっと重要ですな。僕自身もBLとか萌えとかぞぞげが立ってダメな方なので近寄りません。D&Dも昔はダメでしたね(w。
それでは。