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TRPG覚書−2000年7月〜12月−


◆「TRPGにおける“リアル”」−2000/07/13

 映画の「リアル」と現実の「リアル」は違う。マンガでもそうだが、それは現実を模しているが、現実ではない。現実にあるものが「それらしく」記号化されている。

 例えば「爆発シーン」。現実にはあんなに激しく爆発する必要はないし、火も出ない。大体、ヒーローものなどで、敵が倒されると最後に爆発して消えることがよくあるが、それ自体おかしいとは思わないかね?そんな火薬があったら武器にでも使えよとか。ナパームとか使わない限りあんなに火が出ることはないと思うのだが(だから、ベトナム戦争物で火が激しく出るのは正しい)。

 で、TRPGの「リアル」はどこに位置付けられるかというと、それはシステムごとに違う。

 映画的なドラマ性を指向したシステムは、映画的な「リアル」を再現しようとするようになっていると思う。つまりそれは、

「それらしい」

であって、現実ではない。
 これを突き詰めていくと、「ドラマのために現実を歪める」という状況が発生する。これは、それを見ている人間すべてがその流れに乗っている場合には十分通用する。そうでない場合には通用しない。

 つまり「共通認識」が重要になる。

 だから、ゲームマスター一人が独断で「リアルか、そうでないか」を判定するよりも、その“場”全体の雰囲気として「納得いくか、いかないか」を察知して判断する必要が出てくる。これは難しい(笑)。なぜなら、このスタイルでは「ゲームマスターは絶対ではない」からだ。

 一方、本当の「現実」を近似的に模していこうという方向性もある。異世界RPGもこの範疇に入れていいと思うが、異世界を構築して、その中の現実を再現するためにルールを作っていくというところがちょっと違っている。

 さて、こちらの場合「共通認識」は必ずしも重要ではない。

 「ゲーム世界の中での現実はこうだから、ここではこう判定される」という、絶対的な判断基準が存在するだけだ。そして、大抵ゲームマスターが最もその「ゲーム世界」に精通しているはずなので、判断を下す場合、マスターが独断で決めてしまって一向に構わない。このスタイルでは「ゲームマスターは絶対である」と言ってよい。すべては「知っているか知らないか(知らない場合はその場で捏造する)」で、対応するだけである。


 で、どっちが具体的にいいのかというと、どっちでも良いと思う。ただ、大まかに2つの方向性があるのは知っておいた方が良かろう。人それぞれ「リアル」とか「その展開に納得する」とか、上記の2つの見方で見え方が全く異なってくるから。

 ちなみに個人的には、私はどっちかというと現実的な「リアル」寄りの方が好きである。

 そのゲーム世界ではこうであるから、ここはこう判定すべきだというのも納得できる。
 そこはこういう展開の方が、話として面白いからというのも、その「ゲーム世界」を破壊しない範囲でなら納得できる。

 いずれにしろ、納得できさえすればいい。納得できなければ、納得できるまで話し合うなりなんなりすればいい、と思っている。けれども、なかなか時間の都合とかで不満足に終わってしまうことも多い。


◆「システムをやり込む」−2000/08/03

 TRPGで、一つのシステムをやり込むというのは、

・システム全体のバランスを把握する
・何か特定の状況をTRPGのセッションで実現したいときに、どうルールを適用したらそれが実現できるのか?
・逆に、システムから「こんなことが出来る」というのを発見する/把握する
・システムの限界を知る

などなど、マスタリングをする上では非常に有用だと思う。
要するにTRPGのシステムを選ぶということは、

「TRPGのセッションで何をするか(何を出来るようにしたいか)」

を選択することである。

 また一方、TRPGのセッションではいろんなことが出来た方が面白いと思うので、システムの限界を追求して少しでも「出来ることの範囲を広げておく」のもやっておけばマスタリングのバリエーションが広がるので良い。

 さらに、システムの全体像が見えれば、別のシステムをやったときに「前のシステムと比べて、このシステムはどこが得手でどこが不得手で、こういうセッションをするならこちらのシステムでやった方が向いている。」とかまで解るようになると思う。

 一方、一つのシステムをやり込むということは、そのシステムを使った「自分のマスタリングのスタイルを確立する」ことでもあると思う。特に明文化されていない微妙な状況を、自分のマスタリングでどう処理するかというのが重要で、その辺のノウハウの蓄積がマスタリング能力に大きく関わってくる。

 ちなみに私の遍歴を書いておきましょうか。

<紙魚砂のマスタリング遍歴>
中学の頃)
 「ファイティング・ファンタジー」→システム無し(ジャンケン)
 「クトゥルフの呼び声」の設定にめちゃめちゃはまった。
 「ディノン」の影響で、後のBローズの「マジックイメージ」の世界にめちゃめちゃはまった。

高校の頃)
 TRPGはほとんどやらず、設定ばかりしていた。ゲームブックを趣味でちょろっと書いた。

大学の頃)
 堰を切ったようにバリバリマスターした。

1)Bローズ
 …ストーリー指向でかなり独りよがりだったのをだんだん改善?マジックイメージの使い方はほぼ極めてた(?)ので、その見せ方に凝る。このころから「夢」を多用するようになった。
 戦闘バランスが、レベルアップするとすぐに崩壊する(笑)ので、それを補う「潜在点」ルールに凝る。「嘆願」ルール愛用(笑)。(この辺の感覚が「深淵」の「寿命」ルールに繋がってるかも。)

2)Fローズ
 マジックイメージ関連はスタイルがほぼ確立してたので、「感情ルール」「戦闘ルール」「武術・魔術」を突き詰めた。どんぶり勘定なゲームだが、結構戦闘は面白かった。かなり強敵を出してもルールを駆使すれば何とかなるものである。

3)深淵
 夢歩きは「B/Fローズの頃と変わらん」と言われる(笑)。ローズシリーズの頃よりは「マジックイメージ」が無い分わかりやすい「夢」をやるようになったと思う。
 「ドラマのためには人間関係ルールが必須!」を実践で試す。
 TRPGにおける「葛藤」の追求。

専門学校の頃)
 「深淵」でPC間対立をひたすら追求。

社会人の頃(〜現在))
 「深淵」の戦闘ルールを追求。ほぼ把握。
 「PC間対立」で、少数派がいかに勝利を収めるかを追求(1対1に持ち込みさえすればいいのさ)。
 「オンラインセッション」開始。世界征服の野望のための第一歩(嘘です)。「オンラインセッション」にあたって、「深淵」のルールをカードのみで表現できるよう整理統合。

未来)(野望。実現できるかは不明。)
 終わらないシナリオをやる。
 「オンラインセッション」で世界征服。
 etc...


◆「よみがえり」−2000/08/29−

 TRPGの多くのシステムだと、よみがえるのはそれなりに大変に出来ている。ファンタジーが多い関係で、不可能ではないが難しい。これも一つのゲームバランスで、そういうシビアなバランスだから、何とか死なないようによく考えて慎重に行動しようという姿勢が生まれる。

 このバランスを崩しているシステムというと、TRPGでは「パラノイア」がある。これは、「クローン」のおかげでいくらキャラクターが死んでもあっさりすぐによみがえってくる(笑)。では、パラノイアは面白くないかというと、とんでもない!実に面白い。いくらでもよみがえってくるから、いくらでも殺せるのだ(笑)。それもそういうゲームバランス。

 私のゲーム感覚も以前は「パラノイア」に近かった。初期の頃は本当に何回でも何回でも何回でも…よみがえってきたものだ(笑)。むしろ、1回死んだら終わりという最近普通のTRPGの方がよっぽど変わったゲームバランスに見えた。

 実際TRPG以外の様々なジャンルのゲームを見ても、そのうちの半分以上は(ゲーム的に)一度死んでも、何度でもやり直しが(ある程度)利くようになっている。ゲームブック、サウンドノベルのたぐいは、ゲームの構造自体がそもそも死んでも何度も何度もやり直す(やり直す気を起こさせる)ために作られているし、それ以外のゲームでも、時間・金の許す限り何度でもリトライ出来るようになっている。

 何度も何度も死んでも死んでもよみがえってくるゲームが、それでもなぜ面白いのかというと、「生きる」「死ぬ」以外の部分にゲーム的な面白さがあるからだ。シューティングゲームほど何度も死ぬゲームもないと思うが(笑)、それでも何度もプレイするのは、1回1回の生き死に・緊迫感を楽しむのではなく、実際すべてうまくいって生き残るにはどういう道筋を通ればいいのか?というデザイナーの思想を読み解くことが面白いからだ。ゲームブックを何度も何度もやってなお面白いのは、ゲームブックという構造の中の「正しい道筋」を発見するのが楽しいからだ。

 しかもその「正しい道筋」を発見するのには、ただ「何度でも生き返ることが出来る」だけでは全く足りず、デザイナーの思想を読みとる、デザイナーの望むテクニックを修得するという部分をクリアしてはじめてそれが出来るようになる。(アクションゲームなどで、「無敵モード」にしてもゲーム自体をクリアできるとは限らないのと同じことである。)そして、その部分の障害を乗り越えることが楽しい。

 話をTRPGに戻すと、デザイナー(GM)の思想を読みとる面白さを追求するゲームをしようとする場合には、「何度でもリトライ出来る」ゲームバランスにするのが有効である。その危険をより過激でスリリングに味わいたいなら、「失敗したら死ぬ。しかし何度でもよみがえって繰り返すことが出来る。」というゲームバランスがかなり有効である。


◆「単独プレイの基礎」−2000/09/17

 やりすぎると他のPCの出番が無くなってしまうのだが、ほどほどにやるなら単独プレイは実に楽しい。あなたがTRPGのプレイに慣れてきて、もっと難しいことや、もっと緊張感のあるプレイをしたいのであれば、ぜひ1度は挑戦してみるといいであろう。

 単独プレイの最大の利点は何と言っても「独壇場になる」というという点である。自分のキャラクターを目立たせ、活躍させるのにこれ以上おいしい舞台はない。


1)単独プレイに持ち込むためには?

 ありがちなシチュエーションとしては以下のようなものが挙げられるであろう。そういう場面になったときがチャンスである。

「偵察・斥候」
 盗賊系キャラだとよく出くわすシチュエーション。情報の先取りが出来る(どう情報をリークするかはあなた次第♪)という点で非常においしい。ただし、慎重かつ狡猾に行動しないと即死する(笑)。

「見張り」
 後続の見張りなど。敵の本体と遭遇する可能性は低いが、PCの知らなかった伏兵が攻め込んでくることがある。リスクはそれなり。

「情報収集」
 情報収集の場面は、すぐに戦闘というわけではないので、バラバラに行動してもそれほど問題はない。自分のキャラクター特有のコネがある場合(ギルドなど)、問題の核心に迫る情報源の調査の時など、深いところまで突っ込んでいけるので、格好の活躍の舞台とすることが出来る。

「個人的な目的のための行動」
 個人行動を推進しているタイプのシステムの場合、シナリオのスタイルでバラバラに行動することを許可している場合には、その目的のための調査、対決などなどで単独のシーンに持ち込むことが出来る。


2)単独プレイのリスク

 何と言っても最大のリスクは「死」もしくは「キャラクターの完全無力化」の危険である。
 死んだらおしまい。生きてればまだあとでもチャンスがあるかも知れない。(親切なマスターならば、何らかの登場機会を設けてくれることもある)

 さらに、この「死」の危険は、パーティープレイの時よりもずっとシビアである。
 複数人でプレイしている場合には失敗しても他の人がフォローしてくれるが、単独プレイではフォローしてくれる人は誰もいない。つまり。

「失敗=死」

なのである。

 だから、単独プレイする場合には「絶対失敗しないプレイ」「失敗の可能性を少しでも減らすプレイ」が求められる。


3)単独プレイに要求される能力

・危険察知能力
 単独プレイにおいては「危険=死」である。危険を一刻も早く察知して回避する(対処する)必要がある。早ければ早いほどリスクの少ない状態で対処できるし、遅れれば遅れるほど死の危険が迫ることになる。

 PCの能力としては「探知」系の能力/技能が高いことが望ましい。
 PLの能力としては「危険そうだったらとっとと逃げる」「可能な限り安全そうな場所に退避する」といった行動を即座に決断し、実行する「判断力」が求められることになる。

・逃亡能力/時間を稼ぐ能力/助力を得る能力
 どんなに能力が高くても危険を事前に察知しきれない場合がある。そんないざというときのために逃亡するための「取っておき」の方法を何か一つでも多く準備しておくのが望ましい。

 魔法では、「飛んで逃げる」「姿を隠す」「回復魔法(時間稼ぎ)」など。盗賊系では「隠れる」。交渉系では「言いくるめてその場しのぎする」。戦士系ならば、まあ目の前のザコ1人くらいは倒せるはずなので、そこから強行突破するとか。「仲間や一般市民を呼んで巻き込む」というのも使える。

 いずれにしろ、PLは即座に方針を決めて(考えている時間はあまりないかも知れないですぜ(笑))それに全精力を費やす必要がある。


4)失敗しないためのプレイ

・ダイスを振らせてはならない
 ダイスを振った瞬間、それ以降PC/PLの意志は反映されなくなってしまう(反映できるシステムも出てきているが…)。ダイスは、可能な限り振らせてはならない。ダイスを振るような状況を作ってはならない。

・可能な限り成功確率を高める
 単独プレイにおいては「失敗=死」である。ダイスによる判定もまたしかり。しかしそれでも「失敗してはならない」のである。よって、やむを得ない理由でダイスによる判定を求められた場合には、可能な限り成功の確率が高まるよう努力すべきである。ダイス1の目の差で死にたくはないでしょう?
 そういう努力をする気がないのであれば、そもそも単独プレイなど目指さない方が無難かと。

・絶対勝てる時以外戦ってはならない
 当然!

・勝てそうにないときは潔く引くべし
 勝てそうにないと判断したならば、さっさと逃げるか、降伏するのがよい。少なくとも生き残る可能性は残るし、生きてさえいればいつかはチャンスが巡ってくるものである。

・それでも戦わなくてはならない場合…
 少しでも勝つ確率を高める方策を講じる必要がある。(システムにもよるが)10人の敵相手にたった1人で勝てる確率は極めて低い。が、何らかの方法で1対1に持ち込めば、まだ勝てる可能性はある(TRPGのPCは一般人より強力な場合が多いので…)。相手が名誉を重んじるタイプの敵であれば、1対1の決闘に持ち込むとか。地理的条件が許せば、狭い場所で1人ずつ相手にして戦うとか。

 映画「レオン」の最期の逃走場面などが良い例であろう。「レオン」では

・少人数ずつしか突入できない狭い通路にて待ち伏せ
・侵入してくる斥候を各個撃破
・相手が爆弾使用するのを事前察知して、逃走経路確保→逃亡

というほぼ理想的な単独行動時の危機対処をしている。
 最期の敗因は、足手まといのために、比較的安全な「隠し通路からの逃亡」を捨てて、成功確率の低い「偽装による逃亡」を選んでしまったという一点に尽きるでしょうか…。


5)その他注意点

<マスター>
 実は最大の懸念はマスター自身だったり(笑)。
 単独行動の際は、ダイス1の目の差が生死を分ける。戦闘状況の誤解が生死を分ける。その辺の処理をいい加減にやってるマスター相手だと、納得いかない状況でダイス失敗して即死亡ということがよくある(笑)。

 まず、状況確認を正確に行うこと。しつこいくらい確認した方がいいだろう。その状況を冷静に見れば少しでも条件を良くするための対処法を見いだせるかも知れない(一時的な隠れ場/盾になる場所を発見できるかも)。状況を紙に図示する/駒を置いて示すといった、ビジュアルに訴える見せ方をしてくれる場合には対処法が考えやすいし、誤解も生まれにくい。

 何も見せずに言葉だけで説明しようとするマスターは極めて危険である。気分や誤解から距離感等の縮尺がマスターの好みの都合で歪められてしまうことが良くある。不幸にもそういうマスターに遭遇してしまった場合には、マスターの機嫌を取って善処していただけるよう話をつけるか、最初からあまり危険なところには近寄らないよう気を付けるか、対処法はそれくらいしかない(笑)。

<PC>
 単独行動に向いたPCとそうでないPCというのがある。PCを自作/選択する時点でそのことを考慮した方がいいだろう。

1)危険感知能力
2)逃亡能力
3)1対1で相手を何とかする(倒す・懐柔するなど)能力
4)時間稼ぎ能力
5)仲間を呼ぶ能力

一覧にするとこんな感じだろうか。上の項目ほどプライオリティが高い。
 上のような能力があまり無いキャラクターは、死にたくなければ単独行動してはいけない(笑)。


◆「対立を意識したロールプレイ」−2000/09/22

 以下は、マルチ・プレーヤーズ・ゲーム的な「対立」を意識したプレイで考慮すべきことです。

0)多数=強者
 組織の規模が小さいほど「個人」の能力の影響が大きくなるが、それを考慮してもなお「多い方が有利」である。関ヶ原の合戦でも自明だったように、事前により多くの“有効な”味方を数多く付けた方が勝利する(確率が高い)。また、数が多ければ多いほど、手分けをすれば規定時間内にこなせる作業数が多くなる。
 味方は可能な限り多くなるようにすべきである。敵は、可能な限り少数になるようにすべきである。

1)味方を把握する
 誰が味方で、誰が敵かを正確に把握する必要がある。自分が味方もなく単独行動するというのは危険この上ないので、常に「味方は誰か?」「それはすぐに召集・動員できるか?」に気を配る必要がある。味方はPCだけではない。自分のキャラクターの所属する組織、コネのあるNPCも立派な味方である。その力の利用の仕方を誤らなければ、非常に心強い味方となり得る。
 味方がいれば、自分がピンチになった時や1人の能力を超えて何かを成し遂げたい時の助けになってもらえる。

2)敵を把握する
 基本的な情報なので分かっているつもりになっていることがあるが、厳密に考えると微妙な問題をはらんでいることがよくある。「明らかな敵」を知るのは当然だが、それ以上に「潜在的な敵」を把握するのが戦略上重要である。「潜在的な敵」は、状況によれば味方にできる場合もあるので、味方に引き込めそうだったら、機先を制して話をつけておいた方が得策である。

3)味方組織とのつきあい方
 宗教団体、政治団体、ギルド、貴族などは非常に大きな権力を持った存在で、味方とすることが出来ればこれほど心強いものはない。敵を倒す場合には、その重要さ・危険さを組織にアピールすることで、援軍などの助力を得られる場合がある。
 一方、自分があんまりにも組織から見て間抜けな行動ばかりしていると、組織自体から見放されることがあるので、その点気を付けなくてはならない。
 また、組織の利益も考えて、自分に助力した結果が組織にとっても得になるよう、考慮すべきである。

4)敵組織とのつきあい方
 可能な限り正面衝突は避けた方がいい。数の暴力には勝てないし、たとえ味方がたくさんいたとしても正面から行けば、その損害は計り知れないものとなる。
 正面から対決するのは、可能な限り小さな組織or個人だけに絞るべきである。付け加えてその敵対する個人or小組織と、それを保護する大きな組織との間の友好関係を絶つことが出来れば、敵を倒すのがかなり易しくなる。


◆「裏切りプレイの基礎」(「パラノイア」のための)−2000/09/27

 今回はTRPGの邪道なテクニックの解説です。(「パラノイア」では常識です(笑))

 PC間の対立は、お互いの私利私欲が絡むので盛り上がること請け合いです。その際「裏切り」は極めて重要なテクニックとなります。
 ただ、下手をすると人間関係を壊しかねないので、「あくまでゲーム(遊び)に過ぎない」と割り切れる“大人”なプレイヤー相手にしかこのテクニックは使ってはいけません!

 ひとつの方法として、シナリオ開始前に「裏切りがあるよ」と予告しておくという手もあります。が、これは裏切りする際に極めて重要な「奇襲効果」を削いでしまい、かなり痛いです。「パラノイア」はそもそも「そーいうシステム」なので、気兼ねは要りませんが、やっぱり「奇襲効果」はかなり薄れてしまっています。そう、「裏切ると思ってもいない人間を、いちばん嫌なタイミングで裏切る」というのがもっとも効果的なんですね(笑)。
 が、このデメリットは、裏切る側のPCを戦力強化することで多少補うことが出来ます。コンベンションとか、初対面の人間を“はめる”ときにはこの方法を使った方が、まあプレイする人間同士の人間関係を考えた場合には無難でしょうね。

 また、PC同士が対立するタイプのシナリオで、自分が少数派になった場合、他のPCには一見味方と見せかけつつタイミングを見計らって裏切るプレイというのが極めて有効です(笑)。というか、少数派が勝つにはこれしかありません!
 多数派の場合にはわざわざタイミングを計らなくても、適当に味方が多いときに少数派をさらし者にして叩けばいいだけですね。これは易しいので(適当にやっても成功する)、特に説明はしません。


1)裏切りのタイミング
 裏切る→PC間戦闘に入るというのは、まあ一種のPCから提案できるタイプの「クライマックス」に当たります。有効なタイミングというのは、大まかに3つあります。

a)序盤〜中盤での裏切り
 考慮すべき第1の点は「奇襲効果」。他のPLが思いもよらない状況で裏切るのが重要です。例えばステロなファンタジーもので「最初に酒場に集まって…」という状況でいきなり裏切る(「パラノイア」ならブリーフィング時)。この場合、相手は「何も状況をわかっていない」「PC同士まだ仲間になっていない」「こんなところでいきなりクライマックスに突入するとは思ってもいない」ということで「奇襲効果」最大です(笑)。ここで、味方が一人でもいれば成功確率は限りなく100%に近付きます。
 狙え!(爆)

b)クライマックス時の裏切り
 自分が「実は敵のボスの仲間だった」という場合には、この場面がいちばん味方勢力が多い状況なので、戦力的には申し分のない状況です。
 ただ、何も考えずいきなり「私は実は敵だったのだ!」とかばらすと、ただの戦闘になってしまって面白くないので、ギリギリまで自分の正体を明かすタイミングを遅らせることが肝要です。ラスボスの攻撃を受けて裏切るべきPCが弱まった瞬間に、いきなり背後からブスッとかやるのがいいでしょう(笑)。
 ラスボスがピンチに陥ったときに正体を明かすのは、正直あまりいい方法ではありません。まあ、ラスボスを助けて代わりに自分が死んでもいいっていうならどうぞ。

c)クライマックス後の裏切り
 クライマックスが戦闘だった場合には「終わったぁ〜」と明らかに油断していますし、ボスが強くて苦戦したのであればPCたちも精も根も尽き果てて弱ってます。
 ここがチャンス!
 事前準備として、なるべく自分の戦力を温存するよう気を付けましょう。


2)戦力把握
 まあマルチプレイなら常識ですが、戦力把握が重要です。味方が多く、敵が少ない状況を見計らいましょう。事前に口裏を合わせて、計画的にそういう状況を作るのがかなり有効です。


3)カモフラージュ
 自分が味方であると思わせられる状況がいちばん易しいです。相手が味方と思い込んでる存在(PC・外部組織)をこっそりこちらの味方にしておくという手も使えます。自分たちがどれくらいの戦力になっているのか、把握しつつ相手には解らないようにカモフラージュすることが重要です。この辺の情報は秘密裏にやりとりするようにし、いざというときまでPLにも知られないよう気を付けた方がいいでしょう。


4)それいけ!
 いざ決行すると決めたら、全力で行きましょう!周りの迷惑など考えてはいけません!失敗したら、もはや挽回の機会はないと思って下さい。(パラノイアには挽回の機会がいっぱいありますが(笑))そして、失敗=自分が狙われる(死)ということを肝に命じましょう。


5)逃げろ!
 もし万一失敗してしまったら、速やかに全力で逃げましょう。これまた周りの迷惑など考えてはいけません。捕まったら終わりです!
 さもなければ「知らなかった」or「改心した」振りをして何とかごまかしましょう。(「パラノイア」の場合は後者?)


6)そのほか

・GM
 やっぱりまず気を付けなくてはならないのはGMです。
 この時こういったプレイに慣れていないGM相手だと、裏切りによるPC間対立を「シナリオで想定したクライマックス」まで引き延ばそうとすることがあります。が、せっかく決行したのにそれを中断されるとせっかくの奇襲効果が台無しになり、それ以降の勝利の確率は限りなく0に近付きます。PCに勝たせたいなら、ここで妥協して先延ばしにしてはいけません!

 他のPLやGMがこういったプレイに慣れておらず、人間関係を壊してしまいそうだったら(そしてそのことを気にするなら)、引いた方がいいかも知れません。PCの敗北はほぼ確定しますが、まあ他のPLを楽しませるイベンターになったと思って割り切ってプレイした方がいいですかね。

・自分が裏切られる
 自分が裏切られるということもあり得ます。気を付けましょう。
 特に自分が先に裏切ろうとして失敗したときなど要注意です(笑)。

・PC
 孤立しても、ある程度一人で何とか出来るキャラクターが望ましいです。
 と言っても必ずしもPC自身の能力が全般的にいろいろ出来る必要があるわけではなくて、コネとかNPCで強力な信頼できる味方を持っているというだけでも十分です。いざというときに援軍を呼べますからね。

・切り札
 やっぱり「奥の手」がいざというときにあると、何かと助けになります。
 「パラノイア」の場合は「ミュータントパワー」など。状況によりますが、いきなり周りのPC全滅!とか可能な能力がありますからね(^^;)。
 これまたギリギリまで隠しておくことが重要です。


◆「プレイヤーを精神的に追い込むマスタリング」−2000/10/03

 実際のところ「プレイヤーを精神的に追い込むマスタリング」というのは、面白いとは限らない。というか、「追い込まれる方」は辛くて当たり前だが、「追い込む方」も辛い。昔はマスターしてて逃げたこともあったね。しかし、その苦しいのを乗り越えた先の感動が忘れられない。

 TRPGで経験するのはあくまで「疑似体験」でしかないのだけれども、それを感覚としてよりリアルに近付けていく方法はある。それを突き詰めていくと、そこで得られるのは安易な「楽しい」どころではなくなる。「悲しい」「辛い」「腹が立つ」「憎い」「愛しい」などなど。単純に「楽しい」と距離を置くことを許さないような生の感情を引き出すことが可能だ。まあ、TRPGじゃなくても音楽とかでも出来る話だが。そこで得られるのは、「楽しい」とか「嬉しい」とかのような表層的な感情ではなくて、そういう些末な個々の感情よりもっと深いところの感激のようなものではないだろうか?

 人には「コントロール」と言って、感情の防波堤のようなものがある。ある一定までの感情は、その防波堤の向こう側の内に収めて平易な状態で「楽しめる」。しかしそれでは私は物足りない。そのもっと奥の、プレイする人間の生の感情を引き出せるようなセッションは出来ないであろうか?

 「演技」の出来る人、例えば「好きなときに泣ける人」というのは、自分の感情をコントロールできる人である。「防波堤」を一時的に下げて、そこにある自分の悲しみの感情を引き出すことが出来るのだ。私がプレイヤーとしてやる場合には、そういうところまでたどり着きたいですね。演劇の世界では「***の感情の演技」というのがあるらしいですから、一つでも多くの感情をコントロールして演技できるようになれば、もっとより深い感動を得られるようなプレイが出来るようにならないかな?


◆「人数とゲームの構造」−2000/10/10

 TRPGに限らないが、ゲームはプレイする人数・スタンスによってその構造が大きく変わる。当然その「楽しみ方」も変わってくる。ということでその分析をしてみよう。
 あとTRPGの楽しみの中で「会話」が重要な位置を占めるので、それぞれのスタイルの中で「会話」の構造がどう変わるのかも書いておく。

・1人ゲームの場合
 これは1対1(対戦)とあまり変わりがない。相手は、サイコロ、カードによる乱数管理されてたり、ゲームデザイナーによる分岐などが設定されてるだけの話だ。プレイする人間は常にその「会話」の中に取り込まれ、自分が疲れるか、飽きるか、相手の話のネタが尽きるまでその「会話」を続けることが可能である。

・2人ゲーム(対戦型)の場合
 実は1人ゲームと大して変わらない。乱数管理やコンピュータなどが受け持っていた部分を「人」がつとめるだけの話である。「人」の方が学習能力が高いとか、同じ人でも気分によってやり方を変えてくる場合があるとか、人によって思考が違うとかいうシステム外のバリエーションがあるため、1人ゲームよりも飽きにくいかも知れない。
 プレイする人間が常にその「会話」の中に取り込まれているという構造は1人ゲームとまったく一緒。

・2人ゲーム(協力型)の場合
 ここから構造がまったく異なってくる。というのは「自分がいなくても(ある程度)ゲームを進めることが出来るようになる」からである。

・3人以上のゲームの場合
 対戦型も協力型も、その複合もすべてできるようになる。また、明らかに「自分がいなくてもゲームが進む」。止めたくても止まらなかったりすることがあるので、ゲームの参加者は自分の意志を反映したいのであれば積極的にその「会話」に参加する必要が生じる。特に「対戦型」スタイルを選択した場合、介入タイミングが遅れるとゲーム上致命的ダメージを被ることになる。
 「会話」の観点からすると、ちょっと距離を置いて「見て楽しむ」というスタンスを取ることもできるようになる。

 …ということで、2〜3人の辺りでゲームの構造も、その楽しみ方もまったく変わる。「対戦型」「協力型」のスタイルの選択によっても変化が生じる。基本的に人数が多い方が明らかに様々な楽しみを得られやすい(と思う)。多すぎるのはそれまた困りものだが…。それでも最低3人いないと「多人数ゲーム」の構造にならないのではないかと思われる。

「多人数ゲーム」の構造
・自分以外のところでもゲームが進行する
・自分以外のところでもプレイヤー同士の関係が生ずる
・目の前で進行する「セッション」に自分が積極的に介入するというスタンスになる。


◆「ゲームマスターを信用するな!(笑)」−2000/10/11

 いや、もちろん基本的にはゲームマスターは信じるべきです。ええ、ええ。

 しかし、ゲームマスターも人間。ちょっとした好みや気分からその判断が狂うことがよくあります。それがゲームの大勢に影響を与えない些細なことならまだしも、ここぞという決め手の部分でマスターがエゴに走って、プレイヤーがひどい目に遭わされることもある。

 基本的にはマスターの判断を尊重すべきです。しかし鵜呑みにしてはいけません。マスターが明らかに不公平で間違った判断を下したと思ったときに、「その判断はおかしいのではないか?」と指摘することは大事です。でもいつでもそうやって指摘することが出来るとは限りません。コンベンションなど、初対面の場合には言い出しづらいかも知れません。時間の都合でうやむやにされてしまうこともあります。

 それでも、「いつGMが私情に走るか」「どんな被害を被るのか」といったことをあらかじめ知っていれば、ある程度対処して被害を最小限にとどめることが出来るでしょう。


1)ゲームマスターに求められる機能

 いろんな部分がうまいマスターがいます。しゃべりのうまいマスター。ストーリー構成のうまいマスター。戦闘のセッティングのうまいマスターなどなど。これらの技能はTRPGをより楽しむための助けとなりますが、実際プレイする際には最低限の処理さえ出来ればセッションとして十分機能します。別にマスターでなくてもそういった部分で楽しませることの出来るプレイヤーはいる。
 むしろゲームマスターが絶対に持っていなくてはならない能力とは、

「公平さ」

です。いついかなる時でも公平かつ客観的に判断できる能力が欲しい。

 公平さを欠いたゲームマスターは、はっきり言ってあてになりません。信ずるに値しない。公平さを欠くということは要するに「私情に走る」ということです。そうなってしまったマスターは私情のためにルールを改竄します。私情のためにシナリオ設定も改竄します。過去言ったことですらも「あれは間違いだったから」の一言で覆される可能性があります。
 こうなったら「障らぬ神に祟りなし」、その機嫌を損ねないようおとなしくするくらいしか手がありません。怖い怖い(笑)。


2)どんな時に判断が狂うのか?

 では、私情に走るゲームマスターの思考を分析してみましょう。なぜ私情を入れたくなるのか?

「キャラクター(NPC)に愛着がある」
 愛着のあるキャラクターを守るために私情が絡みはじめます。「殺されたくない」「ひどい目に遭わされたくない」とか。やれやれ。

「シナリオ展開に思い入れがある」
 何か「美しいストーリー」とやらに魅せられて「この展開はこうならなくてはいけない」と信じ込んでいるマスターがいます。その通りいけばいいですが、元々の設定に無理があったり、あるいはプレイヤーがマスターの予期せぬことを思い付いたりしてひょっと展開が変わってしまうことがあります。そこで冷静になって先の展開を組み替え直せる人ならばよいですが、思い入れが強すぎて判断が狂うこともしばしば。そうして、元々の展開に戻すために強引なマスタリングをやりだします。参ったね。

「人間的に嫌われてる場合」(笑)
 性格とか趣味、外見、雰囲気などの関係で、特定のプレイヤーが妙に嫌われてしまうことがあります。生理的に嫌だって場合もあるんで難しいのですが…(笑)。はぁ。


3)実際の被害

 いろいろあります。

「キャラクターを殺される」
 普通ならばあるべき判定を省略されて、いきなり死亡となる場合があります。これはほとんど手の施しようがない。
 敵の攻撃が妙に自分に集中してくる場合もあります。危険。逃げた方がいいでしょう。
 後衛にいたはずなのにいきなり攻撃されるとか。キャラの状況を図示しないGMは危険!

「キャラクターが孤立させられる」
 どうしたらいいのかまったく解らない状況でほっぽられる場合があります。以後、合流も許さないとか…。

「キャラクターの行動・発言を勝手にしゃべる」
 ひどいときは「それは違う」とか言おうとすると却下されます(笑)。あんたがプレイヤーやったら?

「無視」
 どうしようもないです。落ち着いたところで話が通じるようにするか、紙に書いてお手紙を出すとか…。

「ダイス目改竄」
 どう考えてもおかしな状況でクリティカル連発するとか…。

「ルール無視」
 ・・・


4)兆候

 マスターが私情を入れはじめる際に、いくつかのよく見かける兆候があります。ゲームマスターの様子を見て以下のような兆候を見かけたら注意しましょう。

「ルールを守らない」
 ルールを守らないのは「愛着のあるNPCをルール的に成り立たせるため」「シナリオ上の設定を守るため」などの理由で守らなくなることが多いです。あらかじめ「今回はこのルールは適用しません」とか宣言してくれたり、実際問題になったときに「ここはこう処理しますので」とか言って、以後きちんと守ってくれるマスターならばまだOKです。都合が悪くなるたびにコロコロルールを変えてくるマスターはやばいです(笑)。

「言うことがコロコロ変わる」
 これも危険です。以前マスターの言った言葉は当てになりません。

「人の話を聞かない」
 マスターに嫌われてるか(笑)、マスターが自分の設定に酔っている証拠です。気を付けましょう。

「長話をする」
 設定や、特定のNPCについてやたらめったら長々と話したがるマスターはその設定に酔っている危険大です。要注意。

「やたらに強いNPCを登場させる」
 PCを観客にして愛着のあるNPCを活躍させようとたくらんでいる可能性大です。危険!危険!


5)対処法

「障らぬ神に祟りなし」
 マスターの言うことを尊重しましょう!マスターの言うことは常に正しい!マスターが思い入れを持っているものは大事にしてあげないと駄目です!もしちょっとでもひどい目に遭わせたりすると、さっそく逆鱗に触れて何倍返しにもされます!くわばらくわばら♪(笑)

「ルールを盾に取る」
 一応大抵のマスターは「ルールは基本的には守るべきだ」と思っている人が多いので、「ルールではこうなってるでしょ」と主張することで説得することが出来ます。「ルールを守らないマスター」には無効。ダメダメですなあ(笑)。

「味方を増やして説得」
 まあ、説得も不可能ではありません。相手も悪い人じゃないと思いますから(たぶん…)。味方を増やして、相手がこちらの話を聞いてくれそうなタイミングを見計らってから説得すれば、思いが通じることもあります。(^^;)

「文書を突きつける」
 話をなかなか聞いてくれないマスターも、文書として書いて渡せば見てくれることがあります。文章で書いた方が、口で言うより多少冷静に見れるかも知れませんね♪
 書いて渡しても見向きもしないようなマスターはもはや手の施しようがありません(-_-;)。

「あきらめる」
 今日は日が悪かったと思ってあきらめるのがいいかも。その場にいるのが苦痛なら、やめて帰るというのも得策です。余った時間をもっと有意義に使いましょう(笑)。


6)補足

 まあ、ゲームマスターも人間ですから、誰しも私情を入れてしまうことはあります。私もよくあります(というわけで、私の言うことを鵜呑みにしちゃいけませんぜ!(笑))。

 問題なのは、そこからどう立て直すかです。ゲームマスターはTRPGにおいて絶対的な権限を持っているために、プレイヤー側からの説得はあまり期待できません。

 一つの方法として「休憩を入れる」というのがあります。判断が難しい局面に差し掛かったら、休憩を入れて冷静になって状況を整理する。そうすることで状況が改善されることも多いです。「あの判断はおかしかったなあ」とか…。

 あと、「最低限守るべきルールを自分に課す」というのもかなり有効です。私の場合、

「ルールブックの記述は明確な理由がない限り必ず守る」
「ダイス目の結果には必ず従う」
「以前言ったことは明確な理由がない限り決して変更しない

というのだけは、必ず守ろうと決めています。とりあえずこれで「ルール」「サイの目」「前に決定したこと」に関しては必ず、いついかなる時でも公平な判断を下せるようになります。
 あと、テクニックとして

「私情はNPCに転嫁して反映すること」

という技をよく使います。
 NPCというキャラクターにしてしまえば「ルールに則って」自分の望みを叶えることが出来ます。PCがひどい目に遭ったとしても、それらは全て「NPCのせい」ってことに出来ますし(笑)、またPCがそれが嫌であれば「ルールに則って」反撃可能です。

 特に「ルールに則って」という部分が重要ですね。ルールがないとゲームになりませんから(^^)。


◆「マスターと戦うためのプレイングテクニック(笑)」−2000/10/13

 押しの強い強引なセッション運びをするマスターと「合わない」というのはよくあることだと思う。ごく普通のごくごくまっとーなマスター相手でも自分がプレイヤーとしてやりたいことと、マスターがやらせたがっていることが「合わない」ことがたまにある。
 まあ、人間だから意見の合わないこともあるやね。そんなとき、普通は「マスターに合わせる」か「みんなに合わせる」というのが波風立てず穏便に済ませるための処世術だ。

 が、毎回毎回そんなことやってて面白いかね?それは毎回毎回自分の意見の反映されないセッションを見せつけられると言うことだよ?

 ただ単純に与えられた状況に従うだけの従順なプレイヤーを目指すならそれでいい。が、もしあなたが「自分はTRPGのセッションの中で『プレイヤーとして』何か出来るかもしれない」という創造的な夢を抱いているのであれば、そこでおとなしくしている手はない。そういう意見の食い違う場面こそが、あなたの意見を反映し、創造的にプレイできる決定的なチャンスだからだ!ここをうまく乗り切って、場を壊さずに自分の思い通りの方向に展開させることが出来れば、それこそ真に創造的なプレイと言うことは出来ないであろうか?(笑)

 今回は、そのためのテクニックを紹介しよう。


1)数々の障害

 第1の障害、それはもちろんマスターである。
 実際のところ、真に「自由な」とか「創造的な」セッションを望んでいるゲームマスターなどどこにもいない(笑)。本当にそんなことになったら、マスターが場をコントロールできなくなってしまうからだ。そんなわけでマスターは表向き「自由だよん♪」という素振りを見せながらその実、あの手この手でプレイヤーを束縛してくる。

 まず、自分がどのような方法でそのプレイを拘束されているのかを把握する必要がある。それは「マスターによって都合よく解釈されたルール」とか「シナリオ上の制約」とか「キャラ設定上の制約」「背景世界の設定による制約」だったりする。
 それら全てをふりほどくことは出来ない。なぜなら、それらの制約によってセッションが成り立っているから、全部をふりほどいてしまったらセッションが崩壊してしまう。セッションの崩壊は=参加メンバー全員の敗北だ。これだけは避けなくてはならない。(でなかったら、あなたは単なる「破壊者」という、プレイヤーの風上にもおけない極めて危険な存在と成り下がる。誰がそんなプレイヤー“もどき”と今後いっしょに遊びたがるだろう?少なくとも私は嫌だ(笑)。)

 では、セッションを壊さずに制約をふりほどく方法はあるのか?ある。全部いっぺんにふりほどこうとすればセッション崩壊を招くが、一部分一部分ずつ細心の注意を払いつつやっていくのであれば、セッションを壊さずプレイヤーの思い通りの方向にコントロールすることが可能だ。

 そして、第2の障害。それは「他のプレイヤー」である。「マスターに唯々諾々と従うことは正しい」と洗脳されている(笑)プレイヤーは非常に多い。そんな甘ちゃんなプレイヤーから見れば、あなたのプレイは実に破壊的だ(笑)。それでもあなたの「創造的な」プレイを続行していくためには、そういったプレイヤーをも説得して巻き込んでいく必要がある。


2)それはマスターの予期している展開か?

 第一に、自分の思い通りの展開をセッションに持ち込む場合、それはマスターの予期した展開なのかどうかを探り出す必要がある。すでに予期した展開で、すんなりリアクションを返してくれるのであれば、わざわざ荒療治のようなことをしなくても普通にプレイすればいい。

 まったく予期せぬ展開であるとか、一応アドリブで返してくれたけれどももうこれ以上は対応できない…という様子が見て取れたら、そこがそのマスターの力量の限界だ。もはやマスターは当てにならない。したがって、さらにその先を続けたいのであれば、あなたがその場をコントロールするべきだ。誰の手助けも当てには出来ない。あなたがそういった展開を持ち込んだのであるから、あなたが自分自身でその責任を取りなさい!

 ただ、何もかも全部自分でやることはない。あなたが「こういう方針でいけばうまくいくのでは?」と指針を示してあげれば、他の人もそれに対応してリアクションを返すことが出来る。どうしたらいいのか方針も立たないのであれば、「話し合い」に持ち込んで、どうしたらいいのかみんなで協力して決めることもできる。


3)最終決定権は常にマスターの手に

 そんな風にして場を仕切ってしまうとマスターがその立場を放棄して「あんたがマスターやったら?」と言ってくることもある。まあ、それでもいいが(笑)、それだとあなたが「プレイヤーとして楽しみたい」と思っていたのが覆されてしまって面白くない。プレイヤーとして楽しむのとマスターとして楽しむのとではまったくその楽しみ方が違うからだ。上のような強権を発行するのは、あくまで「プレイヤーとしての楽しみを強化するため」であったはずだと思うのだが、違うだろうか?

 そういうことで、いったん自分の望む展開を持ち込むために一時的に場を仕切ったとしても、その権利をマスターに返還する必要がある。その方法はごく簡単。「最終決定権はマスターに委ねる」だけでいい。すでに場を仕切って他の全てのメンバーの合意を取り付けているのであれば、例えマスターといえどもその意向に逆らうことは出来ない。(それでも無茶を言うようなマスターだったらさっさと見限った方がいいだろう。)

 実際には、

「…ということになったけど、マスターさん、いいですか?」

などと、確認を取るといいだろう。

 実際のところ、展開を覆されて一番精神的に動揺しているのはゲームマスター本人である。この辺でご機嫌を取って関係を修復しておいた方が得策である(笑)。


4)ルールを熟知する/論理武装する

 まあ、暗記している必要はさらさらないのだが、ルール的なことで納得いかずその展開を覆す場合には、その肝心なルールについて熟知している必要がある。正確に覚えていないのならば、ルールブックを参照すること!少なくともゲームマスターはルールブックを持ってきているはずなので、それを見せてもらってもいい。

 ルールに関するマスターの見解を覆すということは大変重大なことだ。場合によってはシナリオと密接に繋がっている場合もある。なので、それでも敢えてそれを「覆そう」というのであれば、きちんと筋道だった根拠があることを確認した上で、相手を論破することを考えなくてはならない。

 ルール以外のことに関しても同様である。きちんと筋道だった根拠の元に説得を試みないと、相手を納得させることは出来ない。マスター一人を納得させるのではなく、そこに参加している全員を納得させる必要がある。他の全員が納得していればマスターも納得せざるを得ない。基本的にマスターを納得させるのが一番大変であるので、まず他の全員をうまく丸め込んで味方にするという手順を踏んだ方が効率的である。


5)何のために?

 何のためにわざわざ場を止めてまでマスターの決定を覆すのか、その「目的」を自覚することが重要である。「ただ、マスターを困らせるため」では絶対にない!(笑)。それではあなたは単なる「困りものプレイヤー(もどき)」だ。少なくとも、私はそんなプレイヤー(もどき)と一緒にプレイはしたくないので、私の目の前には現れないでください(願)。

 「セッションを自分の思う方向に進行させたいから」というのが本来の目的であろう。が、その目的はあくまで「セッションを崩壊させない」という前提があって初めて成立する目的だ。その前提を壊してまでやるものではない。

 …ということで、「これ以上やるとセッションが壊れてしまうから」とか、あと単純に「マスターに説得し返されたから」ということであなたの希望が通らない場合もある。そういう場合も、受け入れなさい。そういうこともある。もし、あなたの主張が通れば、同じ立場に「マスター」が立っていたわけで、お互い様である。

 もしかしてあなただけ特別とか思っていました?それは妄想です。ええ。


6)補足

 これはあくまで「プレイヤーとして創造的なプレイをするため」の技術です。そういうときに一番の障害となるのは「マスター」。でもマスターも人間にすぎない以上やれることに限界があります。それをわかった上で、敢えてそれでも積極的にプレイするための技術ですぜ。


◆「無口なキャラクターは難しい」−2000/10/17

 無口なキャラクターって、普通のキャラクターと比べてそのロールプレイが非常に難しいです。あまりしゃべるのが得意でない人がこういうキャラをやりたがることが多いんですが、こういうキャラこそ難しいってこと解ってやってるのかな?と疑問に思うことが多いので、そのプレイの仕方について解説してみましょう。


1)「無口」=「何もしない」の場合
 この場合はプレイが非常に楽です。表だったところには極力出ないようにして、ただじっと状況を見守っているだけでいい。まあ、パーティーで行動している場合には他の人にうっとうしがられない程度に最低限の仕事はこなしましょう。
 このスタイルの場合、多くを求めてはいけません。自分は何もできないですから。人が喜ぶのを見て楽しむという脇役的活躍に徹しましょう。


2)「無口」=「いざというときしか話さない」の場合
 こういうタイプのロールプレイはかなり難しいです。以下の要素を考えて的確に行動する必要があります。

・行動するべきタイミングを見測る
・必要最小限の行動で目的が達成できるよう、あらかじめ計画を立てておく。
・「人間関係」をあまりあてにすることは出来ない。
・「自分一人で実現可能なこと」の正確な範囲を把握し、自分でできることはなるべく自分でするように心がける必要がある。
・人に何かを頼む場合、相手に最小限の指示で最大限の効果を上げるような頼み方をしなくてはならない。


3)「無口」=「行動で示す」の場合
 難易度としては中程度。言葉で話しているだけならキャラクターの生死が関わることは少ないですが、「行動」は実際の効果を持っているためにリアクションもリスキーになってきます。
 簡単なプレイ方法としては「プレイヤー発言でのみキャラの行動を表す」ということになります。PCがしゃべるのより、結局プレイヤー自身たくさん話すことになりやすいです。


4)「無口」=「本当に話せない(話さない)キャラクター」の場合
 そのプレイは極めてハイレベルなものになります。プレイヤー発言としてプレイする手も使えますが、通常の会話によるコミュニケーションとは別次元のコミュニケーション方法を開発しなくてはなりません(笑)。
 実際に、プレイヤー自身も無口にリアルにロールプレイしてくれたのを見たことがありますが、あれは本当にむずいです。常人には出来ません(笑)。


補足)
 実際には上のようなタイプの複合でプレイすることが多いと思われる。

 TRPGはコミュニケーションするゲームなので「しゃべってなんぼ」というところがある。「しゃべったもん勝ち」とか。そんな中で「無口」なキャラクターを選ぶというのは、プレイする上でのハンデをわざわざ背負うということに他ならない。それでもあえて選ぶのであれば、「口でしゃべる」以外のコミュニケーション技法を開拓するとか、必要最低限の会話で目的を遂行出来るよう自分のアクションの効率を上げるとか、そんなようなことを多少でも意識しながらやるとそれはそれで別の局面で役立ったりすることもあるし、挑戦のしがいもあると思う。

 単純に傍観者として見ていたいがために「無口」を選ぶのは、駄目とは言わないが私は好きじゃない。私がマスターするときにはそんなプレイヤーは許さないです(笑)。
 やっぱり、自分がしゃべって、自分で行動して何かを達成した方が面白いと思うのだが。


◆「プレイヤーの発想を促進するためのマスタリング」−2000/11/10

 TRPGでより創造的にプレイするためには、プレイヤーに発想させ、それをセッションに取り入れていかなくてはならない。マスターがアドリブなどで発想するのはもともとよくあることだ。それだけでなく、プレイヤーに発想させ、それを取り入れていくセッションこそが真に「創造的コミュニケーションによる遊び」と言えるのではないであろうか?  ということで、そういうプレイを積極的に計算して行えるようにするためのテクニックを以下に解説する。

1)スタンダードなセッティングを選択する
「舞台はいわゆる普通の町だ。君らが普通の町と言ったら有りそうだと思うものはみんなある。そういう町。」

 まず第1に「発想しやすい舞台」を準備する必要がある。どういう舞台が発想しやすいのかというと「誰にでも分かる」「単純」「これといった特徴もない」というのが発想しやすい。内容的にいまいちくんなので卑下されやすい「ライトファンタジー」など、うってつけであろう(笑)。「これといった特徴もない」というのは、TRPGにおいては「自分ならもっと面白くできるのに」とプレイヤーに考えさせ易く、発想を促進させやすい。

 まあ、個性的で特徴のある設定も「その設定が肌に合う人ならば」発想の促進剤となりうる。

2)相手の言い分を全部聞く
「こんなのいいですか?」
「良いです。」

 相手の話の腰を折ると、相手のテンションを下げてしまう。「発想」を主眼にした遊び方ではテンションを高く維持することが極めて重要である。そこで「相手の言い分を可能な限り聞いて、出来うる限りセッションに反映する」というのは相手のテンションを上げ、調子に乗せさせるのに極めて有効なテクニックだ。時間とルールと精神的余裕の許す限り相手を受け入れ、取り入れるマスタリングを心がけると良い。

3)「自分で答えを出す」思考を身に付けさせる
「さてどうしますか?」

 このスタイルの場合、プレイヤーを能動的に考えることが出来るようにする必要がある。ところが、世の中には受け身な人間が多くて、そういう人は自分で何かを考え出したり、自分で何かを判断したりするのが苦手だ(と思っている)。まあ、普段から考えることをしていないと思考する能力が衰えるのは当然の話で、運動していないと体がなまるのとまったく同じことである。

 ということで、プレイヤーの思考能力を鍛える必要が生じる。当然ながら高度なプレイをするためにはお互い高度な能力を要求されるのだ。普通のTVの多人数ゲームでも、初心者同士遊んで面白いという時期もあるし、みんな上達してより高度なプレイの応酬で面白いという段階もある。「発想」を主眼にしたスタイルは、比較的高度なプレイスタイルなので、まだそれに慣れていない人を一緒に楽しめるように教化する必要がある。

 ところで、コンシューマ・アーケードゲーム・ボードゲームなどでは「決まったパターン・やり方」というものがあって、それを覚える=「上達」ということになっている。暗記の得意な日本人向けな思想である。
 だが、「発想」を取り入れるスタイルの場合「正しい答え」というものはない。それらしく考えて裏付けも取れれば、ほとんど何でも出来る。そこからさらにリスクとリターンを考慮して最適解を求めようとすることもできるが、そうしなくても構わない。まず第1に求める結果に行き着く道筋を見つけることが重要で、効率の良し悪しはそのあと考えるべきことだ。

4)“常識”という名の枷を外す
「こんなのありですか?」
「ルール的に再現可能だね。」

 さらに、時には目的すら決まっていないこともある。目的を見つけること自体が目的とか、とにかく何でもいいから好きなことをするのが目的の場合など。そこで重要なのは「ここでこんなことをしたら面白いだろうな」と思い付くための感性である。大抵多かれ少なかれそういった感性を誰でも持っていると思うが(経験的に)、「そんな馬鹿馬鹿しいこと…」という“常識”という名の思考の枷のために意識的・無意識的に自分の発想を阻害してしまっている人はよく見かける。

 感性を磨くことは、いろんな物語を見る聞く…といった経験によってできる。絵でも、いろんな絵を見て知っているか、何も知らないかでその本人の感性の鋭さがかなり変わってくる(その上でさらに才能的なものも関わってくるが、その割合はごく少ない)。多くの人はそれでも少しは絵や物語や音楽を見たり聞いたりしているので、その感性の源になっている「原型となるイメージ」を探り出し、それにこちらが合わせてやることである程度イメージさせやすくすることが出来る。

 “常識”に関しては、やはり「原型となるイメージ」を探り出す過程で「そんな馬鹿な」とか、当人がそう言ったら“枷”のある証拠なので、「それでもいいじゃん」と受け入れるところから始める。まあ、世界設定とかルール的に問題のある場合もあるので、その辺はある程度妥協してもらった上で受け入れることになるが。

 そうやっていったん受け入れられると、そのあとその“枷”が外れやすくなって「発想」しやすくなるという現象が見られる。

5)設定はプレイヤーに決めさせる
「その設定は自分で考えて下さい。」

 PCの設定はプレイヤーの管轄なので、基本的に全てプレイヤー自身に決めてもらうようにする。ルール的に問題のある場合のみ、修正を入れる。

6)設定を参加者全員で決める
「ここは酒場だ。中はどんな雰囲気がいいですか?」
「プレイヤーがそんなこと決めていいんですか?」
「はい、もちろん。」

 イメージを共有するために、設定に関するアイデアをお互いに出し合い、そのあとルール的整合性を取るようにする。

7)思い付きの言葉尻を見逃さない
「もしここで…だったらなあ…」
「じゃあ、そういうことにしましょう。」

 アドリブ能力が必要だが、

・ルール的に可能であるか
・可能にするためにはどうすればいいか
・設定上根本的なレベルでの問題は発生しないか

といったことを即座に検討して問題ないのであれば取り入れるようにする。

備考)
 プレイヤーに発想させることの利点は、

・そういうコミュニケーション自体が楽しい
・プレイヤーとイメージを共有しやすくなる
・プレイヤーが必ず納得する(自分で言いだしたことだから)

といったところに尽きる。
 自分で言わせると、自分で設定して自らの首を絞めたがる人が多いのには驚く(笑)。結局、何らかの形で自分のキャラクターを縛らないと自分で考えて行動し辛いからというのもあるかもしれない。
 実際のところ、何の拘束もなく自由なキャラクターほど(プレイヤーにとって)プレイが難しいものはない。いったんどちらかの方向に走り出すと歯止めが利かないのだ。そもそも歯止めする理由が見つからないという事態に陥る。そうして、走り出したら極限まで調子に乗せてプレイさせると、行き過ぎで却って嫌気が差してくるということがよくある。

 「キャラが勝手に走っちゃって…」と言い訳する人はよく見かけるが、プレイヤーにも自分のキャラクターが暴走するのを止められなくなる時というものが存在するのである。


◆「プレイヤーの発想を促進するためのマスタリング−補足」−2000/11/16

 何だか前回までの話だと一方的にマスターは相手の言い分を全部聞いて受け入れろみたいな話になってて、それは嫌なので(笑)、もう少し補足しようかと思います。

8)1対1で話す
 セッション中最低1回でいいから、各PLと1対1で話し合う機会を作ると良いと思う。全体の場だとなかなか言えないことでも、1対1で話しているときなら言いやすいということがあるので。

9)状況を整理して見せる
 とりあえず状況をちゃんと把握していないと発想もくそもないので(前提が間違ってたらあらぬ方向に走っていってしまうだけだ)現在PCがどんな状況に置かれているか、得られた情報からどんな選択肢を考え得るかを整理して確認するというのは、キャラを動かしやすくなるという意味で良い。
 どの部分の情報が足りないか、どの部分についてまだ結論を出していないかがわかれば考えるべきポイントが明確になるので、発想もしやすくなると思う。

 実際にこれをやると時間がかかるけどね。たっぷり時間があるときか、あるいは他のPCが忙しくて暇になっている人と個別に話し合いに持ち込むということもできる。

 私の場合、オフならメインの話を口頭で進めつつ、開いてるPLとメモで話し合いを平行に進めていくということはよくやる。最近やってるチャットによるセッションなら、最大平行に3つくらいまでなら話が進んでいても対応可能だと思う。掲示板セッションなら全PCがバラバラに動いても大丈夫。

10)常に「誰が話していないか?」に気を配る
 ぼーっとしてるだけだと何も浮かばないことが多いので、定期的に話しかけたりして注意を喚起すると刺激になって動き出してくれることが多い。相手の脳の活動がアクティブな状態で保たれるように、定期的に「あまり話していない人」優先に話しかける。自分で積極的に話してくれる人はほっといても適当に何とかしてくれるので、ほっとく(笑)。

11)可変な状況設定を念頭に、常に柔軟に対応できるように…
 シナリオ作りの段階から考慮すると対処しやすいのだが、相手の自由な発想を受け入れやすくするために、状況について柔軟に思考を巡らせておく必要がある(こういうスタイルを目指すなら)。最低でもどんな場面でも「上手くいった場合」「上手く行かなかった場合」について考えておくと良いだろう。出来ればもうひとつ「上手く行ったような、行かなかったようなよくわからない選択(単なる先延ばし?)」についても考慮しておくと、PLがどんな選択肢を選んだとしてもある程度どれかのケースに収めて対応できるようになると思う。

補足の補足)
 何というか、特効薬はないので、マスタリングの全般に渡っていろいろちょっとずつ気を付けて行っているという状況。なので、私のマスタリングのスタイルそのものの紹介みたいになってしまった。テクニックもあるが、その大元の姿勢が重要かも知れない。私はあれこれ出しゃばってしゃべりたがるマスターが嫌いなので、逆に「いかにプレイヤーにしゃべらせるか」というのばかり考えてきたように思う。
 最初のお膳立てが凄く大変でしんどかったが、いったん走り出すとほっといても勝手に話を進めてくれるようになるので却って楽になる。あとはただ「どんな風に話を進めてくれるんだろう?」と見てるだけ。(1NPCのプレイヤーとしてちょっとだけ参加させてもらうこともあるが…)
 何というか、NPC同士の会話って結局GMが一人で見せびらかすだけなのでひどくむなしいと思う。最近。


◆「GMという名のシステム」−2000/11/27

 まあ、メモ書き。

【定義】TRPGは「GMという役割の人間」自体を遊ぶためのシステムとして規定した遊びである。

<利点>
 自由さ。展開のバリエーションの広さ。ルールにばかり依存しないので人に優しい?

<欠点>
 GMは所詮人間なのでその判断は常に恣意的な物となり、局面によっては著しく公正さを欠いてプレイヤーに不快感を与えることがある。

<改善法>
1.ルール
 明文化されたルールによって不公正さを是正することができる。プレイヤーはマスターがいかにインチキをしているかをルールに基づいて証明することが出来る(笑)。

2.ランダム要素
 サイコロなどのランダム要素は常に公正である。

3.GMの目標を決める
 GMの目標を規定して、GM自身もゲームプレイヤーとしてそのマスタリングの成功の度合いを客観的に評価できるようにする。
 →システムで規定する場合→「うざい」と言う人が確実に現れる(笑)。
 →自分で決める場合→マスターの方針に合わないPLが必ず現れる(笑)
 →「心構え」としては有効。「何となくマスターしてる」よりはまし。

4.GMに対する制限要素
 GMの使用できるリソースに制限を付ける。
 →マナーとしてセッション開始時に規定したリソースは終了まで変更しない。というやり方。
 →確認方法がない。(あてにならない)
 →臨機応変にバランス調整をした方が面白くなることもある(プレイングによって補うことが出来る。)

 <ルール化する場合(案)>
 場面の数を制限する。NPCの数を制限する。舞台を制限する。使用可能NPCを規定する。etc...

<「共謀」という要素>
 緊張感のある「なれあい」を作り出す。
 →障害は?客観的基準は?
 →ルール的障害/基準。「世界観」という障害/基準。

<プレイヤーの想像力>
 →間違いなく負担増する(笑)。
 →認めた方が間違いなくプレイヤーにとっては楽しい。
 →どこまで認めるか?
 →どこまで認めるかをルールによって規定する。
  (シナリオ進行自体を決定する方法をシステムに盛り込む。N◎VAの「神業」、レレレなど)


◆「紙魚砂のシナリオの作り方1」−2000/12/03

1.構造論
<はじめに>
 ゲームブックの世界では、ダンジョンシナリオであろうが、そうでないシナリオであろうがまったく同列に扱うことが出来る。単純に「場面」があって、場面と場面を繋ぐ「経路」があるだけである。ダンジョンものの場合には「場面=部屋」「経路=通路」になるだけの話だ。
 TRPGのシナリオの場合にはどうかというと、全体的な構造を俯瞰した場合にはやはりまったく同じ考え方が出来る。個々の場面の曖昧さ、経路の幅広さという点がゲームブックとは違うが、全体の構造を考えるにあたっては問題とならない。

 むしろ問題となるのは、TRPGのシナリオの大半が1回しかプレイしないことが当たり前になっているのに対し、ゲームブックはあらかじめ複数回プレイすることが前提であるという点だ。

 実際のところ、複数回やるシナリオを喰らったこともあるし(笑)、たまたま同じプレイヤーに対して同じシナリオを2回やることになったこともあるが、前回と違った結果が得られるのであれば、同じシナリオを複数回やっても面白い(面白かったそうです)。
 マスターの視点からすれば複数回セッションをこなした方が明らかにシナリオの質が上がるので、プレイヤーを入れ替えて同じシナリオを複数回プレイすることはよくある。

 話がそれたが、1回しかプレイしないという場合と、複数回プレイする場合とではそのシナリオの構造自体を変える必要が出てくる。とりあえず今回は長年の慣習に従って、1回ぽっきりなプレイをするためのシナリオを想定して話を書こう。


<構造サンプル>
 TRPGで採用可能なシナリオ構造としては以下のようなものがあると思う。(すべてを網羅しているわけではない)構造を考えて、PCが予想外の行動をとった場合に「どこから道を外れたか」「どこで本流に合流させるか」を見極められるようになると良いと思う。単純に「その選択肢は駄目!」と言うよりも、うまく誘導して話の先の方で合流するように考慮した方がPLから感じる「自由さ」が遙かに向上することになる。


◇1本道タイプ

  0
 ┌┼┐
 └1┘
 ┌┼┐
 └2┘

解説)
 ごくオーソドックスなタイプ。

長所:設定が簡単
短所:自由度が低い。GMの独断が入りやすい。


◇分岐タイプ(拡散)

    0
 ┌──┼──┐
 1  2  3
┌┼┐┌┼┐┌┼┐
456789101112

解説)
 今時こんなシナリオの作り方をする人はいないと思う(笑)。
 何回も繰り返してプレイする場合に効果を発揮する。

長所:自由度が高い。繰り返しのプレイにも耐える。
短所:設定が大変。無駄が多い。


◇分岐タイプ(収束)

  0
 ┌┼┐
 123
 └┼┘
  4

解説)
 中間部に分岐を入れたタイプ。やっぱりこのタイプのシナリオもあまり作ることはないでしょう。

長所:自由度が高い。繰り返しのプレイにも耐える。PCがバラバラに行動するスタイルにも向いている。
短所:無駄が出来やすい。


◇双方向−分岐タイプ

   0
 ┌─┼─┐
 1─2─3
 └─┼─┘
   4

解説)
 中間部に分岐を入れ、その分岐を相互に見て回ることも出来るようにしたタイプ。

長所:自由度が高い。全部見て回ることもできる。PCがバラバラに行動するスタイルにも向いている。
短所:つじつま合わせに頭を使う。


◇逆分岐タイプ

 010203040506070809
 └┼┘└┼┘└┼┘
  11  12  13
  └──┼──┘
     21

解説)
 キャラクターがバラバラなシステム・シナリオで見るタイプ。(ここまで極端なものは見かけないが)

長所:自由度が高い。繰り返しのプレイにも耐える。PCがバラバラに行動するスタイルにも向いている。
短所:設定が大変?


◇編み目タイプ

 1─2─3
 │ │ │
 4─5─6
 │ │ │
 7─8─9
   │
   10

解説)
 シティーアドベンチャーとかこんな感じ?

長所:自由度が高い。繰り返しのプレイにも耐える。PCがバラバラに行動するスタイルにも向いている。
短所:設定が大変?つじつま合わせも大変?


<1回しかやらないという弊害>
 TRPGでは、多くの場合同じシナリオは同じプレイヤーに対して1度しかやらないので、結局のところどんなシナリオ構造を考えたとしてもプレイヤーからは1本のラインしか見えない。ということで、労力を少なくするためには1本道なシナリオを考えて作るのが楽だ。

 自由なストーリー選択、ストーリーを創造する、といったストーリーメイクな楽しみを考えるなら、このやり方はプレイヤーを束縛してしまいやすいしマスターの独断が入りやすく、良くない。
 逆にそういう部分の楽しみを廃して「戦闘だけ楽しみたい」とか「お決まりのパターンで良いから、とりあえず物語的展開やクライマックスを体験してみたい」という場合には束縛した方が「あらかじめ決められた楽しさ」を効率よく得ることが出来る。

 私的には「そういう楽しみ方を追求するならシミュレーションボードゲームをやりたまえ。絶対その方が向いているから。」と言いたいところである。残念ながらその大半が日本では入手しづらく、その名残が現在のTRPGの中に残っているようなので、一概にシミュレーションゲーム的楽しみをTRPGの中で得ようとする向きを否定することは出来そうにないようだ。

 さて、一本道な話にする場合、プレイヤーのストーリー感に合わせてごくごく自然な流れに展開を考えていければいいのだが、それは難しい。どこかしら「無理な展開」というものを入れてしまいがちだ(個人的には、これをPLに悟られたらGMの敗北だと思う)。自分自身気がその“無理”に気が付いていないということもしばしば。痛いところを突かれておたおたすることもよくある。
 ストーリーに関する感覚は人それぞれ違う。「〜というように行くのが普通だろうな」と思っていても、人によってはそう感じてもらえないことがよくある(と思う)。ストーリーの裏読みなどは、人それぞれどれだけの種類のストーリーの形を知っているかでその深さが異なってくる。「この程度で驚いてくれるの?」ということもよくあるし、「ここまでひねるか!」ってことも…いや、そんなことは滅多にないか(笑)。
 まあ、私の場合は常に「自分の感覚は人とは違う」というのを前提に考えているので、1本道な展開をするときには、あからさまに不快感をあおるように徹底的に厳しく縛るのだが…。(そういう演出もあり得る)

 で、シナリオの構造を考える意義だが、スタンダードなメインの展開から外れてしまったときに、別の流れのために準備したシーンが流用できる。これが大きい。純粋なアドリブだとやはり底が知れているので、もう少し深みのあるプレイをしたいのであれば、冗長なくらいの設定を考えておいて対応可能にしておいた方が良い(もちろんGMの負担は増えるが)。

 ところで、話が外れてしまった時の対処方法としては、

<1>場数を踏んで、発想しやすく自らを鍛える
<2>世界観を深いところまで理解して、懐の深い対応が出来るようにする。

というのが一般的なテクニックだが、私の場合にはシナリオでそれを補おうとする。無駄に多く場面を作って、それをカスタマイズして合わせるというやり方である。これには、「シーン(場面)」の作り方自体をそれ用に合わせて変えていく必要があるが、その話はまた次回に譲ることにする。


◆「紙魚砂のシナリオの作り方2」−2000/12/05

2.「シーン」

 シーンというか場面と言った方が良いかも知れない。考慮すべき点は以下の通りである。

【最低限やらなくてはならない場面】
 …というものを考える必要がある。1シナリオにつき本当にやらないと話として成立しないような場面は、せいぜい3つくらいで充分だ。その場面で何をやるのか、その場面にPCたちを導くにはどうしたらいいかをよく考える必要がある。

【その場面をやる目的】
 目的&期待すべき効果(PC/PLに対しての)を考える必要がある。まあ「悲惨な場面を見せてPCに義侠心を燃やさせ、世界を救うための決意をさせる!」というような大それた目的もあり得るだろうし「なんとなく違和感を感じさせる」という程度の微妙な場面もある。いずれにしろ、その場面をやることでプレイヤーにどんな印象を与えるであろうかということを意識するべきである。
 無目的な場面はうざいだけ。

【その場面を成立させるのに必要な要素】
 場面を成立させるのに最低限必要な要素を洗い出す必要がある。これが少なければ少ないほど汎用性が高まり、プレイしていて自由な感じも強くなる(と思う)。また、汎用性の高い場面ほど、実際のセッションがどんな進行になったとしても、多少手直しするだけで使える。無駄になりにくいのだ。

 大まかに以下の3通りの場面があると思う。

<1>「人/物に依存する場面」
 これは、メンバーさえ揃っていればいつでもどこでも実現可能な場面である。NPCが絡む場合GMから積極的に働きかけることもできるのでかなり融通が利く。

<2>「場所に依存する場面」
 受け身な場面。シナリオのメインに持ってこない限り「使えたらラッキー」という程度の汎用性である。

<3>「時間に依存する場面」
 他の要素と組み合わせる場合には、あらかじめ情報を与えて知らせておかないと遭遇率が飛躍的に低下する。
 組み合わせない場合は、自動発生イベントとしてセッション進行に区切りをつけるための場面と考えた方が良いかと。


3.アイデアの投入
 シナリオの内容をより充実させるために、シナリオの基本ラインに新たな面白いアイデアを可能な限り投入していくと良い。シナリオの構造上、そのアイデアを投入するとどうシナリオが変化するのかを意識するとなおよい。また、この考え方はアドリブで新たなエピソードを挿入したときに、どう話のつじつまを合わせるかという思考を鍛えるためにも役立つ。
 分類すると以下の3種類のタイプのアイデア投入の方法があると考えている。

<改善案としてのアイデア投入>
 既存の場面をより面白くするために、差し替えるための場面。シナリオ構造はあまり変化しないので投入しても問題は出にくい。つじつま合わせと、シナリオ上の分岐が増える可能性について検討する必要がある。

<分岐を増やすアイデア>
 使える可能性は低い。余裕があるときだけ投入することを考えた方が良いと思う。アイデアだけ書いておいて、いざというときのアドリブの足しにするというような使い方で役に立つことがある。

<シナリオステップを増やすアイデア>
 メインの話のエンディングに至るまでのステップ数を増やすたぐいのアイデア。単純にシナリオが長くなるので、実際のプレイ時間内に消化しきれるかどうかを考慮する必要がある。消化しきれない場合には投入しない方が良い。とりあえずアイデアのみ考えておいて、実際のセッションで時間の余裕がありそうだったら投入するという使い方が出来る。


◆「自分のキャラクターを使いこなすには」−2000/12/09

 自分のキャラクターを使いこなすと言っても、そのシステムやセッションの傾向によって必要とされる(プレイヤーの)能力が異なってくる。
 きちんとキャラクターを把握し、ルール的に正しく行動させるのは結構難しい。特にキャラクターの内面や人間関係を取り扱う場合には、「プレイヤーの私情」が入り交じってきて「これはキャラクターの考えなのか、プレイヤーの考えなのか?」と悩む状況に陥ることが良くある。わからなくなったら以下に紹介するような項目を冷静に整理し直してみるとよいと思う。


1.戦闘主体の場合
 シミュレーションウォーゲームから派生してきたせいか、TRPGの多くのシステムが詳細な戦闘ルールを持っている。したがって、勢い戦闘場面を盛り込んだ遊び方が多くなる。
 戦闘をやるとき、いかにして自分のキャラクターをうまく使いこなすかについては、

・自分のキャラクターが戦闘中に可能な行動を把握する
・自分のキャラクターがどのくらい強いかを把握する

というのが重要である。パーティープレイの場合には、

・自分はパーティーの中で戦闘中どのような位置を占めるか?

を把握することが重要。

主なシステム)
 D&D、SW、ロールマスター、etc...


2.ストーリー支援タイプ
 ヒーローポイントなどのストーリー支援ルールがあるシステムの場合、多くはマルチ・プレーヤーズ・ゲームのように個々の勝利を目指すスタイルになるシステムが多い。このスタイルでの“勝利”とは、「自分の見せ場を演出することに成功する」である。見せ場の奪い合いのゲームになるというわけだ。(そうでないゲームもある)
 ポイントとしては、

・自分のキャラクターが可能な行動を把握する
・自分のキャラクターが他のPCと比べて特に優れている能力を把握する
・自分のキャラクターの能力を発揮しやすい場面を見つけだす(作り出す)

というのが重要である。パーティープレイの場合には、

・他のPCが活躍できそうな場面に気が付いたら、そのPCが活躍できるよう取りはからう

というような視点も必要になるであろう。

主なシステム)
 N◎VA、天羅、番長学園、熱血専用、深淵、スペオペヒーローズ、ワープス、TORGetc...


3.キャラクターの内面を取り扱う場合
 このタイプの場合、「人格をシミュレートする」という遊びが入ってくる。PCがゲーム世界の中でどう行動していくかというゲームと同時に、キャラクターの内面では、どのような過程があってその「行動」に至るかという第2のゲームが動いている。

・自分のキャラクターが可能な行動を把握する
・「自分のキャラクターがやりたいこと/やりたくないこと」を把握する

往々にして「可能なこと」と「やりたいこと」は、ずれている。このギャップが面白い。

主なシステム)
 ペンドラゴン、Fローズ、天羅、深淵、ビーストバインド、etc...


4.人間関係を取り扱う場合
 意のままにはならない「他者」との関係を扱う場合。思い通りにはならないというジレンマが面白い。多くの場合キャラクターの内面も扱っており(第2のゲーム)、付け加えて「人間関係」という第3のゲームを考慮して遊ぶことになる。

・自分が相手のことをどう思っているのかを把握する
・自分が相手が自分のことをどう思っていると思っているかを把握する
・実際相手が自分のことをどう思っているのかを把握する

主なシステム)
 ペンドラゴン、深淵


◆「ストーリーのゲーム」−2000/12/20

・能力の高低は大して意味を持たない。
・よりよい戦略を採ることが出来るかという質的な部分が重要となる。
・絶対的な固定化されたパラメータよりも、相対的ストーリー的「効果」が重要になる。「効果」の得られるものはすべてそのゲーム上「有意味」であり、そうでないものはすべて(どんなパラメータであっても)「無意味」となる。

 ストーリー支援タイプのシステムがこんなようなゲームを目指しているように思われる。しかし「質」を評価するのは難しいので、安易に走ると「1撃必殺の応酬」というどんぶりなゲームになる。こういうゲームはほっとくと一方的になりやすい。かと言ってバランス調整にGMがいちいち介入してくるのはもっとうざい。

 質的優位を段階的に評価出来るようになると良いのではと思うが、実際にやるのはとても難しそうだ。
 将棋のように、閉じたフィールドで、単純なルールが決まってて、それらが複雑に絡み合う流れを読んで遊ぶみたいなことが出来れば、質的優位性を競うゲームになると思う。が、そのためにはルールを知って、それを利用するすべを理解しなくてはならないので(定石とか指南書のたぐいが山ほど現実に出版されていることからも、この道が実に険しいということがわかる。)、プレイヤーにも高度な能力を要求してしまう。

 しかし、こういう次元の“ゲーム”を理解可能な人間は確実にいると思われるし、時間をかければ教化することも可能だと考えるのだが…。


◆「“無”から始めるシナリオ」−2000/12/31

 私が中学生頃に非常によくやったシナリオ、というかフルアドリブセッションで、「“無”から始める」ということをよくやった。拙作「鏡影」でもその手法をちょっと使っている。これはプレイヤーの疑似体験を促進するのにけっこう使える。

 どういうやり方かというと、

1)初期設定
 最初PLは「何も知らない」。よって「何も知らない」というキャラクターを設定する(笑)。

2)現状認識
 
大抵、いま自分はどんな状況に置かれているかを把握しようとするので、その行動に合わせて徐々にデータを与えていく。(極端な場合、PCは人間とは限らない。視覚があるかさえもわからない。言語があるかさえもわからない。(笑))

で、PCの行動に合わせてリアルタイムに情報を与えていき、情報が揃ったところでPCをストーリーの流れに乗せて…というやり方をしていた。ゲームブックだと「モンスター誕生」がこんな感じの話だし、SFでも冷凍睡眠ネタ(「ジャッジ・ドレッド」とか)がそのまま話として使える。
 与える設定はGMが勝手に決めて(笑)シナリオにしておけばいいのだが、私の場合それを全部アドリブでやってた。何しろ毎日毎日「RPGやろ!」とせがまれるのでシナリオなど考えている暇がなかったのだ。

 さて、ちょっと話は脱線するが「疑似体験を促進するシナリオ/セッション」というものを考える場合には以下のことを考慮するといいと思う。

1)「PLは***であるから、そういうPCを設定する」
 PLの設定(?笑)にPCの設定を合わせるようにすると状況をイメージしやすくなる。

例)PLは男だ。だからPCも男にする。年齢は同じ。…

2)似た感情を利用する
 ホラーものではよくあるが「恐ろしい」という感情を「驚く」「気色悪い」という感情で代替させることがある。これらの感情はよく似ていて、とっさにはどちらだか見分けがつかない。
 ほかに「思い出す」→「思い付く」。これもよく似ている(と思う)。他人の作品でこの手法は見たことはないです(笑)。

3)リアルタイムで詳細なリアクションをする
 どんな些細な行動をしてもそれなりの反応が返ってくるのが「現実」であるので、可能な限りすべての行動にリアクションを返すようにする。

例)
「扉を蹴る」
「どれくらいの強さで?」
「痛くない程度に」
「じゃ、痛くない程度の強さで蹴った。コン!という音がした。」

4)沈黙はリアクションしない(特殊)
 ちょっと高度?なテクニック。「沈黙」のリアクションは「リアクションしない」というリアクションを取る。

例)
「おーい!」と声をかけてみます
−10秒間沈黙−
「…何の返事もないようだね…」

5)五感に訴える
 とかく「視覚」のみの描写で終わりがちなので、他の感覚に訴えるような描写も付け加えるとリアリティが増す。

例)
「雨が降り始めた」
「雨か…」
「ザーザー。顔に雨の滴が当たってぬれる。」
「顔にかかった水滴を払って、雨宿りできるところを目指してダッシュ!」

6)情景描写する
 単純にリアルな情景をすることでその場の雰囲気を出すのも効果があるし、情景描写にキャラクターの心理的なものを混ぜて煽るという手も使える。

例)
「ピカッ!ゴロゴロ…」
稲光にその人物の表情が一瞬照らし出される…


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