ゆうやけこやけシナリオ『花火』

プレイヤーの人数:2〜4人
プレイ時間:3時間?
バランス:場面数が多めの2部仕立てなので、中盤以降インフレします。適度に難易度を上げるなり、

・次の場面に持ち越せる「ふしぎ/想い」は合計10点までとする

などのローカルルールを使って調整すると良いでしょう。


1.概要
 とある町の人里離れたおやしろ。

「かみさま、かみさま、おじいちゃんがはやく元気になって、一緒に花火に行けますように」

少年はそう願いました。
少年の願いはかなうでしょうか?


2.登場人物

・原口たけし…少年
・原口かおる…たけしのおかあさん
・原口源三…たけしのおじいちゃん

・まちのかみさま
・草原のかみさま
・まちの人々


3.シナリオ


場面1:おやしろにて〜その1〜

〜「かみさま、かみさま、おじいちゃんがはやく元気になって、一緒に花火に行けますように」〜

・天気
 晴れています。

・情景
 PCたちがおやしろで遊んでいると、手に何か包みを持った少年が長い階段を息切らせながら登って現れます。
 少年は手に持った包みを開いて中に入っていた豚の貯金箱を壊し、お金をすべて賽銭箱に入れた後、手を合わせて祈ります。

「かみさま、かみさま、おじいちゃんがはやく元気になって、一緒に花火に行けますように」

・せりふ
 「おかあさんがね、おじいちゃんはねたきりだからだめだって」
 「おじいちゃんはすごいんだぞ!」

・意図
 PCが少年に興味を持って、「少年がおじいちゃんと一緒に花火に行きたがっている」という話に協力するよう誘導するのがこの場面の意図です。

・備考
 先の展開としては、「おじいさんに会う」「お母さんを説得に行く」辺りが考えられるでしょう。誰がいつどういう風に会いに行くか、考えてもらいませう。あと、どうやっておかあさんを説得するかも。


場面2or3:おかあさん

〜「もう、だめって言ったでしょ」〜

・天気
 小雨が降り始めます。

・情景
 少年の家にやってきます。腰に手を当ててエプロンをした女の人が言います。「たけし、おかえり」

・せりふ
 「もう、だめって言ったでしょ」
 「おかあさんなんかきらいだ!」
 「また骨を折ったりして大変なことになったらどうするの!」(声を震わせながら)

・意図
 おかあさんとの交流&説得する場面です。ここで説得できても出来なくてもかまいません。適度に切ってください。説得材料としては以下があげられます。

1)少年が、なけなしのお小遣いをはたいておじいさんと花火に行きたいといった話を語る
2)おじいさん自身は行く気満々である(先におじいさんに会っていればいっしょに説得に回ってもらうことも可)

 ただし、以下の問題をクリアしない限りおかあさんはおじいちゃんを花火に連れて行くことに納得しません。

1)寝たきりなので花火を観に行くことが難しい
2)PCのことを信頼できない


場面2or3:おじいちゃん

〜「さすがわしの自慢の孫じゃ」〜

・天気
 小雨が降り始めます。

・情景
 老人がベッドの中で寝ています。

・せりふ
 「なんじゃおまえは」
 「ふおふおふお」
 「ひまじゃのう」
 「なんじゃと!たけしがそんなことを……さすがわしの自慢の孫じゃ」

・意図
 おじいちゃんと交流する場面です。少年がおじいちゃんと花火に行きたがっている話をすると大変乗り気になります。おかあさんを説得するのにも積極的に協力してくれるでしょう。
 実はこの場面では裏のもっと重要な意図があります。PCが老人の下を去ろうとしたら「へんげ」で判定してください。以下の情報がわかります。

<達成値8>
 老人の部屋に祭られた神棚からかすかな光の波動が発せられているのに気付く。その光は老人自身からもかすかに放たれており、2つの波動は共鳴し合っているかのように同じリズムでそよそよとゆれている。それは、何か不吉な予兆のように感じられるが、それが何だったのか思い出すことは出来ない。

<達成値16>
 老人の部屋に祭られた神棚からかすかな光の波動が発せられているのに気付く。その光は老人自身からもかすかに放たれており、2つの波動は共鳴し合っているかのように同じリズムでそよそよとゆれている。それは、神棚に守られている先祖の霊たちと老人自身の魂とが共鳴し合っていることを示す。要するにどういうことかというと

「老人はまもなく寿命によって死ぬことが運命付けられている」

ということだ。


場面4:おやしろにて〜その2〜

〜「かみさま、かみさま、おじいちゃんがはやく元気になって、一緒に花火に行けますように」〜

・天気
 曇り。

・意図
 PCたちが情報交換して話し合いをする場面です。おじいちゃんの場面で老人がまもなく死ぬという情報を得られなくても、この辺りでリトライすれば判ったことにして良いです。理由としては「おやしろの古い資料にそういう話が載っていた」「物知りなNPCに話を聞いた」「たまたま思い出した」など。アドリブできるのであれば、過去にそういう光を見て不審に思っていたらPCにとって大切だった誰かが死んでしまった、というエピソードを思い出したことにしても良いです。
 いずれにせよ、ここでPCたちに

「老人はまもなく死ぬ(来年以降に花火に行こう、といった回避策は出来ない)」

ということを明示してください。PCたちがその話を少年にするかどうかは好きにさせてください。

・情景
 話し合いが終わったところで少年がおやしろに現れて手を合わせます。

「かみさま、かみさま、おじいちゃんがはやく元気になって、一緒に花火に行けますように」

・せりふ
 「こんどこそおかあさんをぎゃああといわせるぞ!」


場面5:雨

〜雨〜

・天気
 曇りのち雨。

・意図
 お母さんを説得できていなければ再説得の機会を。そして、空はどよどよと曇り、ザアア!と雨が降り始め第2の危機を告知します。

・説得
 説得材料としては以下があげられます。

1)少年が、なけなしのお小遣いをはたいておじいさんと花火に行きたいといった話を語る
2)おじいさん自身は行く気満々である(先におじいさんに会っていればいっしょに説得に回ってもらうことも可)

 ただし、以下の問題をクリアしない限りおかあさんはおじいちゃんを花火に連れて行くことに納得しません。

1)寝たきりなので花火を観に行くことが難しい
2)PCのことを信頼できない

・せりふ
 「はあ。もう、だめですよ」

・説得成功
 説得がうまくいくと少年は全身で喜びを表します。

「やった!やった!わーい!わーい!」

・雨
 話が一段落ついたところでザアア!っと激しく雨が降り始めます。家の中のテレビのニュースの声が聞こえてきます。

「……XXX地方に突如発生した小型台風13号は……」


場面6:おやしろにて〜その3〜

〜「おかあさんなんかだいきらいだ!かみさまなんかだいきらいだ!うそつき!うそつき!」〜

・天気
 豪雨と猛風。

・情景
 少年が激しい風と雨の中、全身びしょぬれになりながらおやしろに現れます。

「おかあさんなんかだいきらいだ!かみさまなんかだいきらいだ!うそつき!うそつき!」

・意図
 大雨によって花火大会が中止になろうとしていることを知らせます。

・せりふ
 「花火にいっていいっていったのに。あめだからだめだって」
 「わあああん!」
 「かみさまが願いをかなえてくれるなんて、うそだったんだ」


場面7:かみさま

〜「かみさま、かみさま、おじいちゃんがはやく元気になって、一緒に花火に行けますように」〜

・天気
 豪雨と猛風。

・意図
 迷走する。雨を何とかする方法を探す。

・方法案
1)物知りな変化や土地神様に何とかする方法はないか話を聞く
2)「へんげ」の能力で達成値20を出す。
3)その他、何か思いついたよさげな方法
4)PCたちがあれこれ模索して模索して迷い迷って迷いぬいた挙句、途方にくれたところでまちのかみさまに遭遇する(何もいい手が思い浮かばなかった場合)

・せりふ
 「こまっておるようじゃの。けけけ」
 「あいにくと、死すべき運命にある者はどうすることも出来ぬ」
 「しかし、雨ならば何とかなるやもしれん」

・雨を何とかする方法
 「草原のかみさま」には天気を晴れにする力があります。「草原のかみさま」を見つけて力を使ってもらえれば、台風が来ていようが天気を晴れにしてもらえます。そしてこのまちの草原のかみさまは、町外れのとある空き地にいることがわかります。


場面8:空き地にて

〜「かみさま、かみさま、おじいちゃんがはやく元気になって、一緒に花火に行けますように」〜

・天気
 豪雨と猛風。

・情景
 PCたちは草原の神様が住むという空き地にやってきます。

そこは、大量の粗大ごみによってくまなく埋め尽くされています

冷蔵庫、家具、さび付いた車、壊れた自転車etc...

草原のかみさまにとって力の源になる草原が粗大ごみで埋め尽くされた状況では、もちろんその力を発揮することは出来ません。

<ミッションその1>
 空き地を埋め尽くす大量の粗大ごみを除去すること

条件:町を台風が襲い、豪雨と猛風のさなかで作業をしなくてはなりません。ごみは大量でPCたち程度の人数では到底期限までに除去しきれるものではありません。

・解決案
 以下、およびその複合が考えられるでしょう。PLがいい案を思いついたならぜひ採用しましょう。

案1)PCの知り合いの人間に頼む(犬など)。説得のために「へんげ」「おとな」辺りで達成値20必要(かなり無茶な状況で頼むことになるので)。
案2)自分らで自動車・パワーショベルなどを運転して除去する。「おとな」で達成値20、など。
案3)変化の特殊能力で何とかする。《みんなだいすき》など。


場面9:草原のかみさま

〜「かみさま、かみさま、おじいちゃんがはやく元気になって、一緒に花火に行けますように」〜

・天気
 豪雨と猛風。

・情景
 草原のかみさまは緑の髪に緑の瞳の少年の姿をしています。彼は長らく人々から忘れ去られ、交流がなく、大量の粗大ごみによってその力を阻害し続けられたせいで記憶を失い、力も失ってしまっています。

「おまえたちは、いったいだれだ?」

・解決方法
 「へんげ」の能力で12をだすか、知識関係の能力で成功すると、どうすれば草原のかみさまの力を取り戻せるかがわかります。「ゆうやけこやけ」のルールで説明できるので気付くPLもいるでしょう。草原のかみさまが雨を止ませる力を使うためには大量の「ふしぎ」が必要となりますが、この「ふしぎ」を得るためには「つながり」を持った相手がたくさん必要になります。要するに

<ミッションその2>
 草原のかみさまの友達をたくさん作ること(PCを含めて14人以上)

条件:町を台風が襲い、豪雨と猛風のさなかで行動をしなくてはなりません。


場面10:花火

〜花火〜

・天気
 晴れ。

・意図
 無事ミッション1&ミッション2をクリアしたあとの場面。

・情景
 今年は台風で中止と言われた花火大会は、奇跡的な突然の快晴によって実行されることになった。川原にあふれかえる毎年恒例の花火大会の見物客。PCたちは粗大ごみが撤去されてすっかり綺麗になった町外れの草原から花火を見る。

・せりふ
 「おじいちゃんすごいすごい!」
 「た〜まや〜!」
 「おおおお!」
 「花火の知識ならわしは負けんぞう!」
 「おとうさん、そんなにはしゃがないで」


最終場面:おやしろにて

〜「おじいちゃん、しんじゃった」〜

・天気
 晴れ。

・情景
 少年がおやしろに現れます。

 「おじいちゃん、しんじゃった」

・せりふ
 「ありがとうな」
 「いいんじゃ、いいんじゃ。おまえたちががんばってくれたことはわかっておるからの。その気持ちだけで十分じゃよ」

・意図
 思い出を語りましょう。


おしまい