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伝説


 ミレルの城下町。数々の黒魔の襲撃を防いできた、堅牢な城のそびえる町。

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 数十年前、まだこの町が"村"でしかなかった頃、ここに一匹の恐るべき"一つ目の鬼"が現れ、村人を殺して回った。住人は恐れおののき、村を逃げ出す者もいた。
 するとそこに、ある日一人の"賢者"が現れ、この"鬼"を退治してくれた。
 村は、平和になった。

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 2代前の領主の妻が、あるとき病魔に侵された。
 病はなかなか治らず、近隣から"賢者"が呼ばれた。そしてその病の治療にあたらされたが、賢者はその病を癒すどころか誤って妻を殺してしまった。領主は、それは大変な罪だとして、その賢者を死刑に処した。
 しかし、話はそれだけでは終わらない。
 領主はそれ以来死んだ妻のことが忘れられず、ずっと悲しみに暮れていたのだが、ある日、何を思ったのか、たった一人で黒の森へと分け入って行った。彼は、そこで一本の枯れかけた"樹"を見つけたという。それは、連れ合いを失い、もうすぐ朽ち果てようとしていた"沙羅樹"であった。領主はその樹の姿に、一人死の世界に先立った"妻"の姿を見いだしたのかもしれない。彼は何かに憑かれたかのように、その樹で妻の姿を彫り、城へと持ち帰った。 城に戻ってから何日かして、その樹の像は、ひとりで動けるようになった。領主は妻がよみがえったと喜んだ。
 そして共に幸せに暮らしたという。


逸話


【蛙の王子】

"ある国のある御殿の庭に、美しい透き通った水の井戸があり、それがある日濁ってしまった。
 お姫様が井戸の所にゆくと一匹の蛙が現れ、こう言った。

「あなたがわたしのお嫁になる気なら、 いつでもきれいな水をあげましょう。」

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3人目のお姫様だけがその提案を受け入れ、きれいな水を飲めるようになった。

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それからしばらくして蛙がそのお姫様の寝床へやってきて、一晩過ごしていった。
そんなことが3度続き、3度目の朝には蛙が美しい王子様になっていた。
その王子様とお姫様は結婚し、幸せに暮らしたと言う。"


【鬼退治】−1

"昔、ある村に恐ろしい一つ目の鬼が現れ、村人を殺してまわった。
 村人たちが恐れおののいていると、そこに光る槌矛を持った賢者が現れ、その鬼を退治した。
 退治してみると、その鬼は一人の年老いた女になった。
 村人たちはその女が何かの強い恨みから鬼になったのだろうと噂した。"


【鬼退治】−2

"昔、ある村に恐ろしい一つ目の鬼が現れ、村人を殺してまわった。
 村人たちが恐れおののいていると、そこに勇者が現れ、その鬼を退治した。
 退治してみると、その鬼は一人の年老いた女になった。
 村人たちはその女が何かの強い恨みから鬼になったのだろうと噂した。"


【樹】

"年若くして妻を失った男が、その悲しみにくれていると、ある日、自分を呼ぶ声がするのに気が付いた。
 そしてその声に誘われるまま森に分け入って行くと、そこに一本の枯れかけた樹が生えていた。
 男は不思議に思いながらも、その樹を助けなくてはならないと思い、水をかけてやったりして助けてやった。

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 そんなことが2度あり、3度目にその樹の所に行くと、その樹はなくなっていて、その代わりに一人の女が立っていた。
 男はその女を妻に迎え、幸せに暮らしたと言う。"


【呪われた剣】

"昔、あるきこりが森の中へ分け入ってゆくと、そこに一本の幹の中ほどから光を放つ奇妙な樹を見つけた。
 不思議に思ってその樹を斧で切ってみると、その中から一本の剣が現れた。
 ピカピカの刃をしたとても高価そうな剣であったので、きこりはそれを懐にしまって家に持ち帰った。
 そして家族にもそのことを話し、その剣を見せた。

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 その夜、気がつくときこりはいつの間にかその剣を持っており、おまけにそれは真っ赤に染まっていた。
 見ると、その家族は死んでいた。
 きこりはそのことを悲しんだのであろうか、剣を持ったまま、再びその森へと分け入っていってしまった。
 その後、きこりの姿を見た者はいない。
 後にその村人たちは、きこりが呪われた剣を見つけてしまったのであろうと噂したそうである。"