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改題「鏡影(注意!ネタバレ満載)


0.はじめに
1.シナリオの使い方/見方
2.「鏡影」のメインプロット
3.錯綜する「目的」
4.エピソード解説
 4−1.メインエピソード
 4−2.サブエピソード
5.PCの扱い


0.はじめに

 まあ言い訳になりますが、私のシナリオは「情報量が多い」「複数のプロットが入り組んでいて構造がわかりづらい」というところがネックになって、「わからん」「出来ない」と言われることが多いようなので、解説を書くことにしてみました。
 これでマスターしようという人が現れるようになるといいんですが(^^;)。


1.シナリオの使い方/見方

 シナリオの作り方としては、

1)メインプロットを考える
2)平行に走らせられそうな別プロットを私の能力の限界まで追加して設定する
3)関連のありそうな情報・場面・エピソードを私の能力の限界まで羅列する

という作り方をしています。なので、私と同じかそれ以上の情報処理能力、プロット管理能力がないとシナリオのすべてを生かしたマスタリングは不可能です(笑)。

 ですが実際には、「別プロット」や「付加情報」「場面」「エピソード」などはほとんど全部不要です(笑)。無くても十分セッションとして成り立ちます。

 私のシナリオをプレイするマスターは「メインプロット」のみきちんと管理する必要があります。それ以外の部分はすべて付け足しなので、余力があれば追加してPLに見せてあげるという程度の扱いで良いです。どの程度見せるかは、自分のGMとしての力量を鑑みて決めて下さい。

 ちなみにそうやって余分なエピソードを見せることは、PLにシナリオの背景にある奥深い世界を実感させることになるでしょう。


2.「鏡影」のメインプロット

 これは、至って単純です。

1)主人公とヒロインをルールによって相思相愛の仲にする
 →最初の出会いの場面
2)ヒロインに死の運命を与える
 →キャラ設定&夢歩きで示唆する。「巫女選び」の場面。
3)ヒロインに「死ぬことは正しいことなのだ」と信じ込ませる
 →「巫女選び」の場面。
4)決断
 →「儀式」の場面

これだけです。
 結果としてヒロインが神殿に連れ去られるので、それを助け出そうとする典型的な「救出シナリオ」になります(表向き)。本当は、「助けるべきか、助けざるべきか」を決断する「決断シナリオ」ですけど(笑)。

(ちなみに運命の通りに事が運ばなかった場合にはあっさり町が滅ぶだけです(笑)。)


3.錯綜する「目的」

 ここが一番重要なポイントで難しいところです。まず、シナリオ上の「表面的な目的」と「真の目的」の2つがあります。さらにキャラクターごとに、「建前上の目的」と「本音の部分での目的」の二つの目的が想定できます。これらは相矛盾しているのでそこに「葛藤」が生まれるのですが、それを把握するのが難しいのです。


シナリオ上の表面的な目的
 さらわれたヒロインを救出する

シナリオ上の真の目的
 主人公が過去の記憶を取り戻すこと


「主人公」の建前上の目的
 ヒロインを救出したい

「主人公」の本音の部分の目的
 過去の記憶を取り戻したい


「ヒロイン」の建前上の目的
 「主人公」に過去の記憶を取り戻させたい

「ヒロイン」の本音の部分の目的
 助けて欲しい(一緒にいたい)


 実はこのシナリオは依頼シナリオでも何でもありません。
 ただ、「キャラクターがやりたいことをやる」シナリオです。キャラクターが本当にやりたいことは何かを見極めて、決断するシナリオです。
 誰も強制しませんし、やってもやらなくても対応できることを考えて作ったシナリオです(のはず)。


4.エピソード解説
4−1.メインエピソード

4−1−1.「出会い」
 実は、最初の出会いの場面が極めて重要です。ここでPC同士の人間関係およびお互いが抱いている感情をはっきりさせてください。
 どうやればいいのかというと、単純にPCどうし話をさせればいいだけです(それこそ難しいかも(笑))。「主人公」と「ヒロイン」の人間関係は確実に確立させてください。ルールで縛ってるので、きちんとその通りにPLがPCをロールプレイするように指示してください。

4−1−2.「死の暗示」(夢歩き)
 各PCに最低限必要な情報を夢歩きで教えるようにしてください。夢歩きのネタが尽きたら、他のPCに関する情報を夢歩きに混ぜてリークしましょう。

4−1−3.前半〜中間部
 町から出ない限り何しようが自由です。サブエピソードの事件をいくつか起こして場を繋いでください。

4−1−4.「巫女選び」
 気合いを入れて「ヒロイン」を説得してください。「ヒロイン」は「主人公」を愛しているという設定上、従うのが正しいロールプレイです。従わない場合にはそれなりの重大な理由を考え出すようにPLに指示してください(そういう選択もありです。重要なのは「シビアさ」「真剣さ」。真剣にやるようにすることが重要。)。
 「巫女にならない」場合、単純に町が滅ぶだけです。「崩壊」の場面にスキップしてください。

4−1−5.「誘拐」
 やはり気合いを入れて「ヒロイン」を説得し、逃げるように誘導してください。ここはNPCが登場するのでごり押しでも構いません。逆に説得し返された場合には素直に儀式を続行しましょう。結末は変わりません(過程は変わります)。
 「ヒロインを捜さない」という選択もありです。設定で捜さざるを得ないように縛ってあるので、それを覆すだけの理由を見つけた場合には可能です。その場合には、「単純に目覚めた」「得るものは何もなかった」という結末にすると良いと思います。

4−1−6.「儀式」
 決断の場面です。
 状況を整理しPC同士議論させてください。問題の真の焦点はヒロインを「助けるか」「助けないか」です。その際、決断を鈍らせるために(笑)「主人公」の過去の記憶を明らかにしてください(「主人公」プレイヤーに自分の口から言わせるのがキモ)。
 明らかになったあとにその「運命」に従うか否かはプレイヤー次第です。従う場合には「最後の対決」にスキップ。従わない場合にはすべてが「崩壊」するだけです。(運命に勝てないプレイヤーは多いので(笑)、従う可能性は高いです。)

4−1−7.「崩壊」
 演出として危機感を煽る必要はありますが、シビアに判定する必要は全くありません。諦めて滅びを受け入れるか、何とか助かろうと努力するのか、PCたちの意向を確認する必要があります。
 あとはそれに合わせて適当に美しく物語ってください。

4−1−8.「最後の対決」
 ここは「現実」なので、まじめかつシビアに判定してください。話し合いで解決する場合とPC間戦闘に突入する場合とがあります。
 ここは「灰色の蛇の探索者」「秘儀探索者」の見せ場なので、彼らの動向に主眼を置いてマスタリングしてください。

4−1−9.「楽園にて」
 これは「主役」と「ヒロイン」との思い出の場面を参加者全員ででっち上げるための場面です。思い付くままの意見を取り入れて美しい場面を作りましょう。PLたちがどれだけ「主役」「ヒロイン」の物語に感情移入できたかどうかの成果がすべてここに反映されることになるでしょう。


4−2.サブエピソード

 サブエピソードはすべておまけなので、きちんと話を完了させる必要はまったくありません。

4−2−1.地下墓地の双魚
 完全なおまけエピソードです。それ自体の結果はメインプロットに何の影響も与えません。

4−2−2.短剣の話
 ヒロインがどんな運命になるかを暗示させるためのエピソードです。
 短剣が神殿の元に取り戻されるかどうかをメインプロットに反映してはいけません。
 あくまで「主人公」「ヒロイン」が「本当はどうしたいのか」を尊重してください。

4−2−3.連続殺人
 「主人公」の願望を暗示しています。メインプロットには何の影響も与えないようにしてください。

4−2−4.少年の物語
 「主人公」の正体および「過去の記憶」を暗示しています。メインプロットには何の影響も与えないようにしてください。

4−2−5.町の領主の物語
 完全なおまけ話です。

4−2−6.デュエッサの物語
 完全なおまけ話です。


5.PCの扱い

 PL&PCに与えるべき最低限の情報を書いておきます。これだけ与えればシナリオとして機能します。

5−1.「主人公」
 最低限与えるべき情報はこれだけです。
・「過去の記憶を取り戻さなくてはならない」
・「ヒロインを愛している」
・「ヒロインは助けないと死ぬ」
・「ヒロインは実は自分の母親だ(笑)」(最後の最後にPL自身に言わせましょう(笑))

5−2.「ヒロイン」
 難しい役で、サブマスター的扱いになります。最低限与えるべき情報は以下の通り。
・「主人公のことを愛している」
・「自分はすでに死んでいる(これは夢だ)」
・「自分が死んで見せることで主人公に記憶を取り戻させることが出来る」
・「自分は実は主人公の母親だ(笑)」

5−3.「灰色の蛇の探索者」「秘儀探索者」
 ものすごく単純です。以下の情報は、最後の最後でPLに教えましょう。前半〜中間は自由に行動できるので、その間に「主人公」「ヒロイン」との人間関係がどうなるかに注意を置く必要があります(どんな人間関係になっても構いません)。
・「主人公を生け贄に捧げると目的の魔族を復活させることが出来る」

5−4.「償う者」
 基本的に補助の役回りとなります。脇役好きな人向け。
・「自分の親のせいで過去ヒロインは死ぬことになった」
・「主人公は記憶を失っていて、それを取り戻させてあげなくてはならない」
・「ヒロインは実は主人公の母親だ(笑)」

5−5.「ありうざるもの」
 ほぼ完全に自由なキャラクターですが、メインプロットに絡むのが難しいです。ベテラン向け。キャラの話を成立させるのに必要な情報はたった一つだけです。最後の最後に教えましょう(笑)。
・「実はすべては夢であり、自分は夢の中の架空の存在にすぎない」