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本当のはじめに


 まず、このシナリオをやる際の仕様の詳細は以下の通りです。

・PC4人前後を対象。
・セッション回数は2回以上。4回程度で終了する(はず)。コンベンションには不向き。
・難易度は難しめ。


 これは、似て非なる二つの町を舞台にした二つの別個の話です。ただ、PCと一部のNPCは共通で、ほぼ同時に並行して話が進んでいきます。
 プレイヤーはこの構造になかなか気づかないでしょうが、GMは、プレイヤーに対して可能な限りこの秘密を隠匿してください。(だから、プレイヤーは一つの町を舞台にした話と、当初は思い込むことでしょう。)

『何かが違う(ような気がする)』
『しかし、具体的になにが違うのか?理由は?』

 といった印象をプレイヤーに与えるでしょう(笑)。

 二つの舞台が切り替わるのは、夜寝て、「夢歩き」した後です。毎晩夢歩きして、そのたびに舞台を交換してください。

 実際には、一方が「パルキアス」という名の北原のとある町、他方が「鏡の都パレンティアス」が舞台ということになります。二つの町の名は二つを容易に区別する情報となるので、なるべくプレイヤーに対して隠すようにしてください。さいわい両者の発音はかなり似ているので、どうしても町の名を教えなくてはならない事態になったら曖昧な発音をすることでごまかしましょう。町の名前を書いて残してはいけません。それをやるのは、すべてを明らかにするときです。

 簡単に言えば、「鏡の都パレンティアス」が夢の中の世界、「パルキアス」が現実の世界とでも理解してくれればいいです。
 正確に言えば、「鏡の都パレンティアス」は"深淵"の中に沈んでいて、ごく一部の幸運な(不運な?)人間が夢歩きの際に"深淵"の中の秘密の「辻」を無意識に通り抜けてここにたどり着くことができます。この「パルキアス」という町は魔法的に「鏡の都パレンティアス」とつながっているため、比較的夢歩きで向こう側に行きやすい状態になっています。


 名作映画と比べるのは不遜と取られるでしょうが「遠すぎた橋」(原題直訳「マーケットガーデン作戦」)という映画がありました(同名のシミュレーションボードゲームもAH社から発売されていたはずです。)。第2次大戦中イギリス軍がドイツの首都ベルリンまで、途中の川に橋を架けながら進軍していくという話です。もちろんこんな無茶な計画が成功するわけもなく、結局あと一歩というところで挫折の憂き目に遭うのです。

 このシナリオもそれに似たようなところがあって、背後で遠大な計画がなされ、その実行に参加する者は、それが「うまくいけば必ず成功する」ものと信じて進んでいきますが、当初の計画自体に無理があるため、それは決して成功することがありません。しかもその計画の発案者は最初から計画に無理があることは承知していて、その上で「そうか、ここまでたどり着けたか。予想以上の成果だったな。」というような立場をとります。
 ということで、このシナリオ上NPCによって発案され進行する事柄は、必ずどこかで挫折し、失敗します(たぶん)。その上でPCたちがどこまでたどり着けたかを見てあげてください。

 …とは言うものの、これはあくまで私の考えにすぎないので、その通りにやる必要はありません。(こういう方針で設定・場面などを作っているというだけの話です。)