場面集 -回帰-
『それは、知ってはならぬ。』
〜死霊の言葉〜
先に言っておきますが、実はこのあたりのエピソードは、半分はおまけみたいなもので、プレイヤー(特に「不義の子」「滅んだ貴族の子孫」)が、自分自身の過去を明らかにしようと動き出さない限りは発動しません。
本筋とは直接関係ないので、特にこだわる必要はありませんが、こちらの方面にプレイヤーが行ってくれるとプレイヤーにとっても深みを感じられて面白くなるし、GMもプレイヤーの驚く顔が見られて愉快な気分を味わえるでしょう。
◇パーティー
◇弓の射手
◇亡霊
◇ペンダントの夢
◇母との別離
◇はりきせ
◇老いたる領主との対決
◇ロケット
◇母の亡霊
どこか大きな建物の中で、着飾った人たちがたくさんいて、談笑をしている。楽団が音楽を奏でている。
あなたはまだとても小さくて、みんなが大きく見える。あなた自身も今の感覚だと高そうな、ひらひらした感じの衣装を身に着けている。
あなたの母親は、その広間の隅でひとり、なんだかさびしげな様子で座っている。時々胸のロケットを手でもてあそんで、窓の外を見る。彼女はあなたに気付くと笑みを浮かべる。
まわりから、ひそひそと何か囁き交わす声がする。あなたかあなたの母親のことについて話しているらしい。あなたがもっとよく聞こうと近づくと囁きはおさまり、彼らはあなたをちらと一瞥だけして、それとなく歩み去る。
外に出ると、父親がぼんやりした表情で歩いている。
あなたはその顔に見覚えがあると思う。誰かに似ているのだ。
よく思い出すと、その顔は、あの人にどことなく似ているのだと気付く。
筋骨隆々とした男が弓を構えている。その矢はあなたに向けられている。
あれは戦車の魔導師だ。
彼は髪をなびかせ、重々しく告げる。「おまえは、呪われている。
おまえが望もうと望むまいと、
おまえ自身がただそこに在るだけでおまえの周りには災厄と不幸とが招き寄せられる。
だから私は、おまえを殺さねばならない。
災いが起きる前に。」「おまえの子も、呪われている。
おまえ自身の呪われた運命が、さらなる呪いを招いたのだ。
そしていずれ、そこに災いを招き寄せるであろう。」「おまえはなぜ呪われているのか、知りたいのか?
おまえの母親は、不幸な目に遭って死んだ。それはおまえが呪われていたからだ。
昔、ある町が一夜にして滅んだ。それはおまえが呪われていたからだ。
いま、町の領主が病に臥せっている。それもおまえの呪いが招いたことだ。
おまえの子供は、呪われている。それもおまえの存在が招いたことだ。
そして、おまえとおまえの子の抱えた呪いは、この町を滅ぼすやもしれぬ。
それもすべてこの呪いによるものだ。
だから、すべてが起きてしまう前に、おまえたちを滅ぼさなくてはならない。」
故郷のかつての領主が現れる。
「あの男は呪われている。
その呪いはいずれ大いなる災いを招くであろう。
その前に、あの男を抹殺しなくてはならない。
そしてあの男の血を引くすべてのものを抹殺しなくてはならない。
わしにはそれができなかった。
だから、あのようなもっと大きな不幸が故郷のあの町を襲うことになってしまったのだ。
この呪われた運命を、一刻もはやく止めなくてはならない。」「なぜ呪われているかだと?
それは、知ってはならぬ。…
それは、知ってはならぬ。」
◆ペンダントの夢(「滅んだ貴族の子孫」&「不義の子」両方の夢)
昔、母親はロケットをいつも大切にしていた。
そのロケットのふたを開いて、じっと眺めていることが時々あった。
彼女はそれをいつも大切にしまっていて、あなたには一度も見せてはくれなかった。ある日、あなたは母に隠れてこっそりと、そのロケットを盗み出してその中を見てみた。
そこにはただ、古ぼけた男の肖像があるだけだった。
絵がぽとりと落ちて、その裏に名前が書かれているのに気が付く。(これが自分の父親?)
ある日、母はどこかに行くことになった。
「おばさんのところで、良い子にして待っているんですよ。」
そう言って出ていって、1週間。彼女は帰ってこない。
1ヶ月たって、あなたの家に何か鎧を着て武器を持った男たちが何人もいるのに気が付く。
そこから逃げ帰る途中、彼女に会った。
あなたは彼女と話をし、その後遅くなったので帰ろうとして、ところが彼女がついてくる気配がないので振り返ると、
彼女はいない。
どこを探しても、彼女は見つからなかった。
以来、彼女とは会っていない。
あなたは磔にされている。
ここは広場で、大勢の人々が集まって、じっとこちらを見ている。
あなたの目の前に男が立ちはだかる。「さて、子供の居場所を吐いてもらおうか。
どこにやった?」「見つけたらどうするかだと?決まっているじゃないか。
おまえもあの呪いのことは知っているだろう?
あのガキを生かしておいたら大変なことになる。あんなガキは、生きてない方が、いや、そもそも生まれない方が良かったんだよ。
おまえがそうして苦しんでいるのもそのガキのせいだ。
いいかげんに吐いて楽になりたいとは思わないか?」------------------
火が焚かれ、燃えていく。信じられないような熱さと息苦しさの中で涙が流れ出す。
もう何も見えず、何も着終えず、何も感じられなくなったとき、声がする。
「…いいのか?奴らはいずれおまえの子を探し出して、殺すぞ。」
「…力が欲しいか?…」
そこに近づくに連れ、無数の死霊たちが集まって呪いの言葉を延々と吐きかけてくる。
死霊たちを降り切ってようやく家の前までたどり着くと、
そこに威厳を漂わせた老いた男が立っている。「おまえを生かしておいたのが間違いであった。
もっとはやくにその命を絶っておけば、あんなことにはならずにすんだであろう。
ここを通すわけには行かぬ。
それは、知ってはならぬことなのだ。」
かつて住んでいた所に戻って、夢に見たロケットを見つける。
二人が夢に見たその顔と、その中の肖像画はすべて一致する。
ひっ、と息を呑む声に振り向くと、母が立っている。
彼女は口に手を当て真っ青な顔をしたまま、駆け去っていく。彼女を追っていくと、彼女はそこで両膝をついてうなだれている。
「…おまえは、なぜ『呪われている』と言われるのか知りたいの?」
「…それは、それは、それは…
あの人が、おまえの父にあたる人が、
私の…私の…私の…」ほとんどかすれたような、かすかな声で
「あにだから…・」
そしてさらに、
「あの人の、あの女の人の
父親も、同じ。
…同じ人なの。
だから、おまえの子も。」