5−5.運命の時
『息子よ… 殺しに来てやったぞ。』 〜魔人の言葉〜 |
0.死の使い
(少女と一緒に残ったPCがいる場合のみ。)扉が開かれ、外の寒い風が雪を伴って流れ込んだ。
その戸口に異形の者が立っていた。
白く胸に紋章が描かれ、肩に垂れのついた鎧を着た、高貴な雰囲気を漂わせる壮年の男。
・・・・・・それは、右半身のみで、左半身は鎧の隙間から白く長い毛がはみ出しているのが見え、その顔は、角が生え、尖った耳をした山羊の顔であった。
純真無垢な山羊の瞳と憎しみのこもった人間の目をし、やがて口だけで笑みを浮かべた。「ここにも獲物がいたか・・・・・・」
※ここで感情共有したPCがピンチになれば、少女が身を呈してでも守ろうとするでしょう。
☆魔人オルム=ヴァーグル(覚醒前)
年齢:壮年 地縁:氷 霊縁:火 クステ:魔神
体力:26 運動:18 感覚:19 霊感:30
愛嬌:2 美麗:16 威厳:22 畏怖:25
HP:22 /23 /28 防御力:8
幸:幽霊、霊魂などがいるとき。
不:人が多い往来など。
感情 憎しみ 激情
愛しさ (21)0
武術:《炎旗盾》
攻撃:
3D6+3※(大刀)
"凝視"(精神戦。金縛り。)
備考:左半身が山羊になっている。左眼で"凝視" ができる。1ラウンドに2行動(右手の大刀による攻撃、左目による"凝視")ができる。1対1の場合「金縛り」にして首を切る(「生命値」に直接ダメージ)など可能。「金縛り」のまま切られれば1対1でなくとも「負傷値」に直接ダメージ(鎧は有効)。☆魔人オルム=ネロ=ヴァーグル(覚醒後)
体力:26 運動:22 感覚:21 霊感:31
愛嬌:2 美麗:20 威厳:26 畏怖:27
HP:24 /24 /29 防御力:8
攻撃:
3D6+3※(大刀)×6
"凝視"「霊感」対抗RR。金縛り。
幸:幽霊、霊魂などがいるとき。
不:人が多い往来など。
備考:「憎しみ」「愛しさ」のいずれかの感情を 捨て、融合させたネロが完全にその人格を乗っ取った状態。オルムが「愛しさ」に溺れて気を抜くか、死にそうになって意識を失った場合などに覚醒する。山羊の頭で腕は6本。基本的に6本の腕で 6回攻撃する。"凝視"も可能だが同時にはできない。「武術」も使用不能。
1.少女の死
もし少女と感情共有したPCが扉の向こうに行き、他の誰も残って彼女を守らなければ彼女は死んでしまいます。彼女は霊になってでも彼(彼女)を待ち続け、無事会えると嬉しそうな悲しそうな表情を浮かべ、「愛しさ」を渡して消え失せます。
2.運命の絆
扉の向こうに行っていた者たちが戻ってくると、
魔人は少年の姿を見つけ、
ため息をつき、
心底嬉しそうな笑みを浮かべる。「息子よ・・・・・・殺しに来てやったぞ。」
彼は憎しみの激情をしているので、通常の説得などをしても無駄である。
「貴様らに最愛の者を奪われたこの悔しさがわかるものか!」
少女が死んだ場合には感情共有していたPCにこう言うかもしれない。
「貴様も同類か!ならば分かろう。その悪魔の子のせいであの少女も死んだのだ!共に殺そう!」
2−1.母親の霊
少年の背後から白い女性の影(母親の霊)が助けに入る。彼女はオルムに「愛しさ」(2D10)を与える。
「・・・・・・俺自身にも、もはや止められぬのだ・・・・・・」
2−2.「愛しさ」を与える
オルム=ヴァーグルは愛していたがゆえに憎悪に狂っているので、「愛しさ」につながる説得は有効です。
また、実は「銀の竪琴」に「ザリの瞳」をはめて演奏すれば「愛しさ」の歌を歌い、自分の「愛しさ」をすべて与えることができます("無情"になるが)。
これによりオルムが"激情"した場合、正確にルール通りやると「愛しさ」の激情をする。
↓
「憎しみ」の激情は他の激情が起こっても解除されないので瞬間的に二つの感情が激情した状態になる。
↓
「愛しさ」は、他の感情が激情していると解除されるので、元に戻る。しかし、これでは面白くないので、ここは少しルールを変えて、彼にジレンマに陥ってもらいましょう。
「俺は・・・・・・俺は、いったいどうしたらいいんだ!・・・・・・どうしたら・・・・・・。」
2−3.覚醒
彼がジレンマに陥るとその隙をついてネロが覚醒します。
戦闘によって意識を失わせた場合、とどめを刺そうとすれば少年が止めに入ります。そしてその隙をついてネロが覚醒し、少年を襲います。
2−4.父と子
ここで最も重要な点はオルム=ヴァーグルが「憎しみ」「愛しさ」の二つの感情しか持っていないという点です。マスタリングにそれなりに自信があり、プレイヤーにもある程度ロールプレイの能力があると思われる場合には、感情ルールを元にしたロールプレイをするように心がけてください。
オルム=ヴァーグルに対して何か「愛しさ」を駆り立てるような行動することには全て効果があります。彼は少年を憎んでいますが、同時にほんのわずかですが、愛してしまってさえいるのです。心の奥底にあるその感情をPCたちは引き出すことができるでしょうか?
"少年"の振る舞いも重要です。彼は予言者としての才能があるので、ある程度自分の未来を知ってしまっています。特に、PCらを神の世界に導く過程で自分が死ななければならないことを(だから本当はこんな冒険など最初から嫌で仕方ありません)。少年は父親を憎んだりしてはいません。畏れてはいますが、むしろ自分の理想として頼りたがってさえいます。PCらが少年に対してどう振る舞うか、そしてその影響で少年がどう行動し、それが父親の感情にいかなる影響を及ぼすか。難しいですが、非常に重要です。もし、少年に「僕の父さんを殺させない!」というせりふを言わせることができたら、それは父親の心の奥底の感情を呼び覚まさせるのに十分な言葉と言えるでしょう。
そして、あと一つ、重要なのは"少女"と感情共有したPCです。彼(彼女)はもちろん憎しみに狂うでしょう。彼は憎しみに狂ったオルム=ヴァーグルと同類です。さて、最後に父親が心の奥底の感情を呼び覚まされ、それが為に自らの死を選んだ場合の死に際のせりふのやりとりの例を記します。
「父さん!」
「・・・・・・息子よ・・・・・・大きくなったな・・・・・・」
「父さん・・・・・・僕はどうしたらいいんですか・・・・・・僕には世界を救うなんてできないよ・・・・・・」
「・・・・・・息子よ、人は、だれしも己の使命を持っ ている・・・・・・それが成さねばならぬことならば・・・・・・そしておまえがやらなくてはならないのであれば・・・・・・おまえは逃げてはならない・・・・・・
・・・・・・おまえも男だろう・・・・・・気をしっかり持つのだ・・・・・・」(せき込み、空を見上げる)
「わしはこれから妻の元にゆくのだな・・・・・・
息子よ・・・・・・もしくじけそうになったら空を見上げるがいい・・・・・・わしはいつでもそこからおまえを見守っているぞ・・・・・・」(息を引き取る。霊感の高い者は彼とその妻の残留思念が連れ添って天に昇ってゆくのを見ることができる)
「父さん!」
(父親の胸の上に突っ伏して泣く。)
…ここまでできたら、このセッションは成功です。(できるかな?)