第5章:運命の輪


 気が付くとPCたちはどこかの廃虚の中にいる。全員が小さな"獣"に変えられて。外が何か騒がしい。
 時間は夜。
 外を見るとかなり大きな都市で、どういうわけかそこらじゅうで火が燃えている。怒号と、キンキンという金属のぶつかりあう音がし、鎧を着た兵士たちが戦闘を繰り広げている。そして、遠くから何か漆黒の巨大な影がいくつか近付いてくるのに気付く。

「来たぞ!」

 兵士の誰かが叫び、同時に巨大な火の球が飛来し、家のひとつに命中した。家が吹き飛び、その爆風にのまれて兵士がばたばたと倒れる。
 あれは、黒龍騎兵だ。
 そして、この街は、エンダルノウムか?

※"獣"になったキャラクターは、唯一「剣」のイメージだけは引き続き所持している。「樹」のイメージを所持していた者は、それが「剣」のイメージに変質しているのに気が付く。


0.ナレーション

 このシナリオはたいへん難しいシナリオなので、おそらくプレイヤーたちはこれが一体何の話で、どういうわけでこんな展開になってしまったのかを理解していないであろう。したがってここでちょっと間を置き、ここまでの情報を一通り参照しながら以下の問題を全員で考えて話し合ってもらうようにすることを勧める。

問1 「トーラ」とは何者か?
 (答)
 【1】樹の元にたたずむ乙女
 【2】エルザ
 【3】メディート
 【4】シフ

問2 シドの"嘆願"を受け入れたのは何者か?
 (答)神。エーン=ソーフ。

問3 なぜ"嘆願"は受け入れられたのか?
 (答)神(エーン=ソーフ)自身が"世界の破滅" を望んでいたから。

問4 PCらをカストーラへと導いた存在は何か?
 (答)
 【1】イヴァ
 【2】エルザ(≒トーラ?メディート?シフ?)
 【3】オッツ(≒"生命の樹"?)

問5 結局、世界に何が起ころうとしているのか?
 (答)世界の破滅。そして"神"自身もそれを望 んでいるらしい。


1.グドルの再登場

「地獄巡りはいかがでしたかな?
 なかなかよくやってくれましたな。
 ・・・・・・というのはお世辞に過ぎますな。
 ・・・・・・いやいや、相手が相手でしたから、まああんなものでしょうか。
 ふむ。
 しかしまあ、あなた方が一応それなりに頑張ってくれたおかげでいくらか儲けさせてもらいました。
 お礼を申し上げなくてはなりませんな。」

「さて、ところであなた方はこれからどうされるおつもりですかな?
 "赤の呪い"のせいであなた方は永久に無力な獣として生き続けなくてはならなくなってしまった。
 全ての"感情"を失ってしまっているからもはや転生することすらままならない。
 しかしまあこうなってしまった以上、もう"人"がどこで何をしようが関係ないですかな?
 それはそれでいいかも知れぬが、ただ、"奴"は本当ならあなた方を完全に世界そのものから滅し去ろうと望んでおるから、せいぜい見つからぬよう、隠れてひっそりと暮らしていくのですな。」

 グドルと名乗った頭にターバンをした老人が後ろ手を組んで立っている。
 彼はPCらを興味深げに眺め回し、満足そうな笑みを浮かべる。そしてしばらくそのままニヤニヤ笑っていたが、やがてちょっと哀れむような表情を浮かべながらこうきりだす。

「・・・・・・実は、ひとつだけみなさんに手を貸して さしあげる方法があるのです。
 どうです?
 わしとひとつ取り引きをせぬか?」

「その取り引きというのはこうです。
 まず、わしがこの状況を打破する唯一の方法をあなた方の中の誰かにお教えしましょう。
 そのかわりその方法を知った者は、それに関する全てのことをわしに任せ、その指示に従うと誓うこと。
 つまり、後戻りはできないということですな。
 どうです?」

「そうそう、ただし、この取り引きは
 あなた方の中のたった一人としかできません。
 あなた方にかけられた呪いは極めて強力なものなので、さすがのわしでもお救いできるのはたった一人だけ。」

「 なに、わしはあなた方から何かを取ろうなんてことはこれっぽっちも考えてなどおりません。
 純粋にあなた方の手伝いがしたいだけなのです。
 わしを信じてくだされ。
 ・・・・・・まあ、実を言いますと、このことによって、また新たな賭けが成立することになりますのでな。
 それはこちらの事情という奴ですが。・・・・・・」

「・・・・・・実際どうするかを選ぶのはあなた方だ。
 わしは何も強要しようなどと考えてはおりませぬ。
 よく考えて自分の最もよいという道を選ぶのですな。・・・・・・
 ・・・・・・さあ、どうされます?」

「もし、やると言うのであれば"あなた自身の運命"をかけて"誓い"を立ててもらわなくてはなりません。」

「シドは、この時代のどこかにいる。奴がこれからここで何をするか見物ですな。」

「ここに自らの手で己の運命を切り開いて行こう という真の勇者はいないのか?
 世界最強の力を持っていた者がここに集っているというのに。
 ・・・・・・しょせんはエセ勇者の集まりに過ぎなかったか。
 世も末よのう。・・・・・・」

「"生命の樹"の探索者たちよ。
 これは"試練"なのだ。
 栄光の影には堕落が、勝利の影には敗北がつきまとうように、"生命の樹"の探索の影には常に"死"がつきまとうであろう。
 それは、本質的にはひとつであった"樹"と"剣"が二つに分かれ、彼の者の心に"暗き欲望"が生まれたことによって起こるのだ。」

「汝らがその探索を続ける限り、いずれシドとはまた会うことになるであろう。」

「『樹であり、剣でもあるイメージ』を所持せし 勇者たちよ、汝らは"生命の樹"の探索を誓ったのではないのか?
 ・・・・・・汝らの内にそのイメージがあり続ける限り、誓いは効果を持ち続ける。」


2.真の試練

 PCらの真の敵は"神"自身である。
 今、彼らが生きる世界のすべてを支配する、“神”その人が、真の敵である。
 …何者も“神“と戦って勝つことはできない。
 それでも、PCたちは、
 自分たちの世界を救いたいと願うのであれば、
 ”神”に戦いを挑まねばならない。
 そして勝たねばならない。

 よろしいかな?

……………………

 それでもなお"生命の樹"を探索しようという者を選び出さなくてはならない。
 本当に自分から、自発的に「やろう」と言うのでなければ、グドルは認めない。
 別に全員が「もうやめだ」と言ってあきらめてしまってもいっこうにかまわない。
 その場合にはキャンペーンはここで終了となる。

「ここには真の勇者はいなかったか。」

 「やる」と一人が言った場合、グドルは疑わしげな表情でさらにこう言う。

「それは本当か?
 本気で言っているのか?
 この"生命の樹"の探索は、本当に困難な試練だ。
 たとえおまえがここで名乗り出たとしても、それを成し遂げられるという保証は一切ない。
 志し半ばで倒れてしまうことも十分考えられるであろう。
 それでもやるのか?」

「なぜそうまでして"生命の樹"を探索し続けよ うというのだ?」

 ここで、グドルが本当に納得するぐらいの言葉を言わない限り、認めてはならない。

……………………

 説得が成功すると(GMであるあなたがプレイヤーに説得されたら)グドルは笑みを浮かべ、こう言う。

「おまえの勝ちだ。
 では、いいことを教えてやろう。

『"生命の樹"探索のための第1の試練は、今まさに成し遂げられた。』

 さあ、来なさい。"真の勇者"よ。おまえの運命はこの扉の向こうにある。」

 グドルがパチンと指を鳴らすと、その背後に"渦"(運命の輪)の描かれた扉が出現する。
 そして骨の商人は真の勇者を引き連れて運命の輪の扉の向こうに去って行く。・・・・・・

 ・・・・・・が、グドルは他のPCの前にすぐに戻ってくる。

「"月の指輪"はまだ持っておられるかな?」
(最初のシナリオで手に入れたはずの「銀の指輪」。持っていてもいなくてもグドルはそれをどこからか見つけ出してPCらに見せる。)

「汝らにはまた別の使命がある。汝らは星宿海に存在するという『月の神殿』を見つけ、そこにいる"カイマン"という名の人物に、この"月の指輪"を渡さなくてはならない。やってくれるな?」

「では、運命の輪は回るであろう。さらばだ。汝 らにメディートの加護のあらんことを。」

 グドルは残るPCの一人にそれを押しつけ、さっさと「運命の輪の扉」の向こうに、再び去って行く。


3.輪廻転生

 以下は"勇者"のみ聞くことが出来る。(他の人には秘密)

「まず、わしの話を聞いた後は全てわしの言うと おりにすることをおまえ自身の"運命"にかけて誓いなさい。
 破ればおまえの人生はわしがもらうことになる。まあ、それも一興ではあるがな。」

「では話そう。
 わしができることは汝を"物"に変えることだ。 まあ"物"になったところで状況はそう変わらぬが、ひとつ、可能性が残される。
 伝説を知らぬか?
 "人"と同じ、全ての感情の覚醒した"物"は、魂を得て"人"に生まれ変われるという話を。
 つまり、こういうことだ。
 わしが汝を"物"に変える。
 そして汝は失ってしまった"感情"を己の力で取り戻す。
 さすがにそこまで手を貸すことはできぬが、わしがそなたにその最初の"きっかけ"を得る手助けをしよう、ということなのだ。」

「では、汝を"物"にする前にもうひとつ"誓い"を 立ててもらわなくてはならない。
 汝自身の"真の名"にかけて誓うのだ。
 ・・・・・・そなたには極めて強力な呪いがかかっている。だから従ってくれぬ場合にはわしの術は効果を現さないであろう。
 "誓い"の内容はこうだ。

 汝が"人"に戻るその時まで、
 わしとおまえ自身を除いたいかなる存在にも
 これまでの冒険のこと、
 それから、"生命の樹"のことを話してはならない。

 それを誓うのだ。
 これを守り続ける限り、汝が世の塵となって再びメディートの御前にゆくその時までわしの術は効果を持ち続けるであろう。そして汝が再び"人"へと戻った時、わしの術は成就し、呪いは解ける。"月"はひとつの輪をめぐり、空にその満ち足りた姿を現すであろう。その時こそ汝が遥かなる高みに昇る時となるのだ。」
(この新たな"誓い"を立ててもらう。破った場合には全ての術は解け、さらにグドルに"真の名"を知られることになる。)

「"月"はメディートだ。精神だ。
 おまえはこれまでの冒険で全ての感情を失い、そしてこれからまたそれを取り戻そうとしている。
 それは月が欠け、闇に沈み、またもとの満ち足りた姿に戻って行くのに似ているとは思わないかね。」
(「無名の感情」の覚醒。上限10。現在値1D6。)

「それは"月"だ・・・・・・。
 汝の求める"生命の樹の種"のかけらのひとつは"月"にある。
 ・・・・・・大変な使命だ。本当に。そなたの内の『"剣"であり、"樹"であるイメージ』が汝を勝利へと導くよう祈ろう。」
(この狡猾な老人にこんな表情ができたのか、というほどの優しい笑みを浮かべる。「慈しみ」の覚醒。)

「さて、ではさっそくやろうか。
 ・・・・・・何?どのようにしてやるのかだと?(フン!)
 すぐにわかる。
 そこにじっとしているのだ。
 わしが何をしても、動いてはならぬ。・・・・・・」

 老人は口を開ける。
 それは途方もなく巨大な穴となり、あなたはその中にまるごと飲み込まれてしまう。
 そして生きたままバリバリと喰われる。 (「恐れ」の覚醒。)

「やはり、口の中で息の根を止めてそのまま喰うのがいちばんうまい。」

 グドルは唇の端の血のあとを拭いながら邪悪な笑みを浮かべる。

 

・・・・・・暗転・・・・・・


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