"湖の精霊"
◆はじめに
これはFローズ用の「精霊」との出会いを扱ったシナリオで、サプリメントの「ユルセルーム博物誌」があるとより楽しめるでしょう。別になくともプレイは可能です。ほとんど戦闘も何もないので、Bローズ用にコンバートするのも極めて容易です。
さらに言うなら、以下のイメージを再現できるのであれば、どんなシステムでもプレイ可能です。
(ちなみにこれはフルアドリブ、ノーシステムでプレイした、100%発想オンリーのセッションを元にしたシナリオです)
◆概略
とある森に、「精霊の湖」と呼ばれる小さな湖があります。ある青年が、「夢で精霊に会った」と言って彼女を探し求めに行ってしまいます。
PCたちは、その青年、あるいは青年の親などに頼まれて森に行くことになります。
◆プロローグ:歌
酒場かどこかで、吟遊詩人が美しい歌を歌います。異国の地の耳に新しいさまざまな歌も歌いますが、最後は村人のリクエストに答えて村に伝わる民謡を歌います。
《歌》
"それは、求婚者を待つカレリアという名の娘の歌。
始めの求婚者は
鉄の口を持ち、
鉄の首を持ち
鉄の上着を着て
鉄の手袋をはめ
鉄の贈り物を持ってやってきた
彼はカレリアに求婚した
しかし、彼女は「約束されていません」と言って断った二番目の求婚者は銅の求婚者
三番目は銀の求婚者
四番目は金いずれの求婚も彼女は断わった
そして最後に"穀物"の求婚者が現れ、
カレリアは「約束されています」と言ってその求婚を受けた"
◆導入
基本的に3通りあります。気分で選んでください。
1)「青年」に頼まれる
夢で見た精霊に恋してしまった青年が、PCたちに「彼女を探すのを手伝ってくれ!」と言います。2)「青年」の知人(肉親(?))に頼まれる
「何を思ったか知らないが、あの物騒な森に行っちまった息子(?)を無事に連れ戻してくれ!」などと言われて頼まれることになります。3)妖しい予言者などに「森に行くと面白いものが見られるよ」などと言われる
文字どおりです。森に行ってしまった「青年」の話などを噂として聞けるかも知れません。4)巻き込まれる
PCの誰かが夢を見て恋に落ち、精霊を探すために森へと行くことになります。この場合、「青年」を登場させなくてもいいでしょう。
☆青年
地縁:闇 霊縁:地 クステ:大亀
体力:7 運動:8 感覚:8 霊感:7
愛嬌:1 美麗:4 威厳:7 畏怖:2
HP:8/8/7
技能:〈竪琴演奏3〉〈歌唱4〉
◆噂
村(?)の近くの森の奥深くに「精霊の湖」と呼ばれる小さな湖があり、夜、そこで歌を歌うと、美しい精霊が現れて舞を舞うと言われています。ただ、その湖は人のあまり立ち入らないような奥深くにあり、いろいろと危険な魔物が現れるだとか、一度行ったら二度と戻ってこれなくなるなどという話もあります。
◆夢
夢に、小さな丸い湖と、その上で舞う精霊の姿を見るかもしれません。夢を見たPCは、その精霊のあまりの美しさに、恋に陥ってしまうかも知れません。
"森の中に、ぼんやりと光を放つ丸い湖が見える。
見ると、その湖の上をこの世のものとは思えないほどの美しい精霊が舞っている。
その髪は月の輝きの銀色で、それは空気に溶け入りそうな程に繊細だ。
その瞳は不透明だが、暖かみがあり、淡い緑色をしている。ふと気が付くと、どこからか歌が聞こえてくる。
どこかで聞いたことのあるような懐かしい感じがする歌なのだが、
それが何だったか思い出すことが出来ない。"
◆森
人のあまり立ち寄らないような深い森ですが、実際はそれほど危険な森というわけでもありません。ただ、ちゃんとした道などあるわけではないので、湖を見つけるのには1〜2日程かかります。その間に何らかの遭遇をする可能性はあります。
遭遇表
1.蔦に絡まれる。
2.毛虫が落ちてくる。
3.石につまずいて転ぶ。
4.どこか遠くで獣が奇声をあげる。
5.突然、たくさんの鳥がバサバサと飛び立つ。
6.何か人影のようなものが、PCたちと平行して、しばらく距離をおいて一緒に歩いてくる。やがて"それ"は興味を失って去っていってしまう。
◆湖
小さな湖です。 水は澄んでいて、とても綺麗です。特にこれといって何もありません。
ただ、夜、月明かりの元で、ある"歌"を歌うと美しい精霊が現れて舞いを始めます。その"歌"とは、吟遊詩人の歌ったあの"歌"です。そして精霊は歌の続く限り舞い続けます。歌が止んでもすぐに消え去ったりはしませんが、しばらくすると消え去っていってしまいます。
何か"悪意"のようなものを感じた場合にも彼女は消えてしまいます。彼女は、実は、目が見えず、耳も聞こえず、声も出せません。ただ、極めて敏感に肌で気配を感じることができ、例えば例の"歌"を歌った場合には、それを空気の振動や、水面の震えから感じ取って舞うことが出来ます。それ以外の歌には特に反応を示しません。
風や、湖の表面を伝わる"波紋"などには敏感に反応します。
人が近くにいれば、その微かな体温を感じ取ることすらできるかも知れません。マスターは、ここでの情景を美しく、幻想的に語ってください。
そして、目も見えず、耳も聞こえず、話すこともできない精霊の様子を、美しいながらも謎めかせて、魅せるようにしてください。
◆岩場:青年
PCと青年が最初から出会っていない場合、彼は森で迷っています。湖の近くを適当に探せば、夜、青年が歌を歌う声でその居場所を発見することができるでしょう。彼は、どこか大きな岩の上で、空に輝く月に向けて恋の歌を歌っているかも知れません。
◆出会い
"湖の精霊"とコミュニケーションする最も効果的な方法は「触れる」ことです。誰かがそこから連れ出してやれば、彼女は喜んで(飛びきりの笑みを浮かべて)着いてゆこうとします。
「マジックイメージ」を用いた会話も可能です。ただ、ルール通りやるだけだと単なるカードの出し合いに終始してしまってつまらないので、マジックイメージを精霊とPCが出し合ったら、それによって生まれる情景を共同で思い描いてみるといいでしょう。その結果、何かほほえましいような情景が生まれたら、うまくコミュニケーションできたことにするといいでしょう。
〈例〉「犬+円」(+喜び)
"小さな犬が、嬉しそうに尾を振りながら、くるくると円を描くように走り回る情景が浮かび上がる。・・・・・・"
☆"湖の精霊"
地縁:森 霊縁:水 クステ:一角獣
親和魔力源:"真の青""真の緑"
親和マジックイメージ:円・竪琴・犬・花輪・百合
接触値:70
出現条件:湖、池のあるところ
形成魔法:???
援助: ???
◆エピローグ
彼女を連れ出しても、湖から離れてしまうと消えてしまうのですが、彼女はその「青年」(あるいはPC)の心の中で生き続け、どこでもいいから池か湖の側に行って例の"歌"を歌えば彼女と会えるようになります。
あるいは、その湖のほとりに住み着いてしまってもいいかも知れません。 そしてその精霊の新たな物語は、美しい歌として吟遊詩人に歌い継がれてゆくようになるでしょう。
◆あとがき
昔のシナリオデータを見てたら、ぽろっと出てきたのでそのまま掲載。他愛のないシナリオ。
むかし、「ルールなし・シナリオなしでやろう」と、本当にルールなしで(と言っても即興で判定はしたが)話も全部即興でプレイしたものである。のちにFローズのサプリメント「ユルセルーム博物誌」の精霊のルールを見て、「プレイできるなあ」と書き下ろしてそのままになっていたのを今回発掘した。
こんなのでも遊べてしまうのがB/Fローズの面白いところである。
参考)
「忘れられた民族たち」(ヴェリヨ・トルミス/POCC-1010/1)