夢物語
1."月"の物語 "
月"は4つの頭を持っていた。 "頭"とは、その存在を支配する有力な「属性」、「側面」等々のことである。 "月"の場合には、「能動性」「破壊性」「受動性」「創造性」の4つの側面を持っており、彼はしばしば地上に降りるときに、「能動性」+「破壊性」→「破壊の剣を持った英雄」、「受動性」+「創造性」→「"ラウラ"という名の(雌の)蛇神」という姿をとった。 彼らが地上に降りても"月"が消えないわけは、彼らが自分の"影"をそこに残してきているからで、故に彼らは地上において"影"を持たなかった。そこから「破壊の剣を持った英雄」は時に「影無き者」とも呼ばれたりした。 しかしある時、「破壊の剣を持った英雄」=アスン・シオン(砂人の言葉で"狂った踊り手"という意味)という名の英雄(?)が"罪"を地上で犯してしまった。そして罰として地上をさまよい続けることになった。この時、アスン・シオンの敵対者であった「ヴリトラ」が代わって「月」の座を得、同時にアスン・シオン等も地上において"影"を持つようになった。 (砂人たちの伝説より)
2.アスン・シオンとヴリトラの物語
「アスン・シオン」の名を「インドラ」に代えるとよい(というのはわかる人にしかわからない書き方である。)。ヴリトラは世界中の水を支配し(アウルとはちがう意味で)、そしてせき止める存在である。彼は初夏に生まれ、そして水をせき止め続ける。そこにアスン・シオンという名の英雄が現れ、この悪龍を「破壊の剣(シュタース)」をもって打ち倒す。その直後世界中に大雨が降り注ぎ、河という河が氾濫を起こす。
(砂人たちの伝説より)
3.アスン・シオンの第1の贖罪の旅
3−1.神の杖、ラウラ、シュタース
アスン・シオンは、シュタース(破壊の剣)を探すために森の奥に入って行った。そして「神の杖」と呼ばれる巨大な樹(?)を見つける。その樹には枝などは1本もなかった。 そこには「ラウラ」という名の蛇神がおり、神の杖に巻き付く。アスン・シオンはその背を伝って神の杖の頂上に登る。 頂上にはオウゲンと名乗る老人がいた。また黒い剣が突き立っていた。 老人が問う。 「"生と死"を識る者のみが真にそれを使いこなすであろう。汝は"生と死"を真の意味で識る者であるか」 「知っているさ。」 そう言いながらアスン・シオンは剣を抜く。 「それは本当かな?」 老人は笑いながらそう言い、消え失せる。
3−2.うめきの洞窟、罪
洞窟の中を歩いている。少し行くと洞窟の奥の方からぼんやりと光がもれているのに気付く。 やがて広い場所に出る。奥に祭壇のような場所があり、巨大な(直径1メートルくらいの)宝珠が置かれている。宝珠ぼんやりと光を放っている。 宝珠の中をよく見ると小さな赤ん坊がいる。(見つけた) 彼はそう思った。 ・・・・・・「シュタース」、「破壊の剣」またの名を「魂の剣」というそれは、その力を発揮するために高貴な者(ユルセルームの場合、"生来的"にスィーラの加護の高い者のことであろう)の魂を必要とするのである。・・・・・・ その剣に導かれるままに各地をさまよい歩き、そしてようやくここにたどり着いた。 そして左手のその剣を振り上げる。赤ん坊は目を閉じておりまったく気付く様子はない。無抵抗の赤ん坊を斬ることに一瞬ためらいを覚える、が、しかしすぐに剣によって増幅された破壊衝動がそれを上回る。 彼はその顔に笑みさえ浮かべながら、宝珠ごとその赤ん坊を一刀のもとに両断する・・・・・・。
3−3.迷宮、鳥たちの一族
彼は岩々によってできた天然の迷宮をさまよっていた。すでに守護者たちの加護を失い、人々たちからも迫害を受け、その草原から追い出され・・・・・・いまにも倒れようとしていた時突然辺りが暗くなる。 無数の鳥たちが現れ空を覆いつくしたのだ!鳥たちは辺りの岩々にとまる。そして彼らのリーダーらしきフクロウが前に進み出る。 「汝の進むべき道を教えよう。・・・・・・」
3−4.砂漠、湖
彼は砂漠を延々と歩いてゆく。・・・・・・ ・・・・・・やがて地平線の彼方に名にか輝くものを見つける。湖だ!あの鳥たちの言っていたことは本当であった・・・・・・。
3−5.オウム貝、"自身の眠りを夢見る王"
青。まさに青一色の中に彼はいた。湖の底?見ると目の前に巨大なオウム貝がいる。それは彼の心に直接語りかけてくる。 「"運命の踊り手"よ、汝に問う。『この世で最も大きく、かつ、最も小さなものとはなんぞや?』」 彼は自信ありげな、はっきりした声でこう答える。 「それは『フルヘ』、この世界そのものであり、かつ自身をその内に含むもの、"自身の眠りを夢見る王"であるあなたのことであります。」「然り。我が問いに答えし者よ、さすれば汝が罪をあがなうために真にせねばならぬことを教えよう。・・・・・・」
3−6.影との対決
彼をずっと追い続けてきていたヴリトラの半身"影"との対決。彼を倒さなければ、"水"がユルセルーム世界に生きるものたちにもたらされることはない・・・・・・。 死闘の末、彼は"影"を倒す。しかしそれと引き替えに右腕を失う。激痛。・・・・・・
3−7.剣の山、火口
彼はその山頂に登る。あの「神の杖」で会ったあの老人がふたたび現れる。 「そう、その剣をこの火口の中に棄てればそれで汝の役目は終わり、"罪"はあがなわれるのじゃ・・・・・・。」 彼はその言葉に従い、剣を火口の中に投げ入れる。 老人の顔に突然現れる邪悪な笑み。 「汝は今、まさに破壊の種をそこにまいたのだ!100年の後にその火口の底の太古の龍が目を覚ますであろう。汝の罪があがなわれることは永久にない!」 老人はふわりと浮き上がり、蛇の姿になって空を登っていき、天空でとぐろを巻いて月に重なる。 彼がその老人こそが自分の宿敵であったことに気付いた時はすでに遅く、さらに深い罪に対する裁きを受けるために無明の闇の中に沈んでいく・・・・・・。
4.フルヘ
この世界そのものである神。(ハヴァエルとは違うが、最もその影響を受けた存在だとも言えるかもしれない。)この世界はオウム貝の形をしており、その数千ある房室の中の838番目のものがこのユルセルーム世界である。そしてそれぞれの世界の中に自分自身が存在している。つまり、世界を覆う神でありながら、その中身である世界の中でこの神に会うことができるのである。そしてその中にも当然数千の世界があり・・・・・・というように、入れ子のような構造が永遠に続いている。だから「この世で最も大きく、かつ、最も小さなもの」とか、某物語の「『自分自身が王室で寝ていること』を夢見る王様の逸話・・・・・・その話からも"永遠の構造"が導き出せる・・・・・・」から「自らの眠りを夢見る王」などとも呼ばれる。 (砂人たちの伝説より) 4−5.虹色の龍、黒い龍の伝説 詳しいことはよくわからないが、はるか昔に虹色の龍と黒い龍(太古の龍?)の間で争いがあった。それはとてつもないくらいの大規模な争いで、それがためにユルセルーム大陸の現在のような形が決まったというほどのものであったそうだが、結果として虹色の龍が勝利し、黒い龍はとある(デュロン山脈辺りの)火山の火口の中に沈んでいったらしい。 勝利した虹色の龍はしかし、かなり傷ついていて、砂漠の上を通りかかった時にそこをさまよう人々を見て憐れんだのか(?)、メタモルフォーゼをして湖となった。 そしてその後にその周辺に人々が集まり、町が栄えるようになったそうである。 (砂人たちの伝説より)
5.ヴリトラの4つの頭
「月」には4つの頭を持ったものにしかなることができない。ヴリトラの場合の4つの頭とは、「呪詛」「破壊欲」「生への憧れ」「諦念」のことである。前述(4−2.)の通り、ヴリトラは1年のうちのほんのわずかしか生きていることができず、にもかかわらず毎年誕生しなければならない・・・・・・という不条理な己の生を定めたこの世界、およびこの世界で"普通に"生きるものに対しての感情とかが以上の4つの彼の側面を作っている。それぞれについて解説すると以下のようになる。 「呪詛」は、生者、定められた運命に対する呪いの言葉である。 「破壊欲」は自分の運命等の不条理さを定めるものを滅し去ろうという欲求である。 「生への憧れ」はきわめて素直な"普通の生""生らしい生"を求めようとする気持ちである。最後の「締念」は、己の運命はしかたないものだと諦める気持ち、果てのない永遠の受容の感情である。 ヴリトラが「月」の座に着いたからといってその定めが変わったりした訳ではなく、やはり1年の中の大半を「死の中の生(?)」とでもいうべきものの中で過ごしている。そして彼が普通に(月としてではなく)ユルセルーム世界の中で活動するためには「死者でさえもが普通に活動できる場」に、それを変換しなくてはならない。彼はそれをある程度の範囲では無意識的にできるので、ヴリトラが地上で活動をした場合、その周囲では「死者が生きているかのように動き出す」といった現象が起こるのである。
6.現在
季節は夏。どういう訳か今年は雨が降らず、そこらじゅうで水不足が起きている。 ラ−ズ・ベリー(「呪詛」)、リヴ(「生への憧れ」)は、一緒にどこかで旅をしている。(その周囲では「死者が動き出す」という現象が起こっている) トレド(「破壊」)は、「破壊の剣」が棄てられ、またそのはるか前には「太古の龍」が落ちていったというデュロン山脈の山を目指している。 ヴェイン(「締念」)は"月の座"にいる。しかし彼の「瞳」が"月"として人々に見えるために、その欠け方がユルセルームとしては異常である。(ルールブック参照。"今"は、例えば「半月」が見えたりする。)この不吉な証しを見て世界の破滅を予言する占い師とかも現れる。 かつての"月"、アスン・シオンらはヴリトラの4つの属性のそれぞれに封じ込まれている。具体的には、 アスン・シオン(能動性)→ラーズ 破壊の剣(破壊性)→トレド 創造性→リヴ 受動性→ヴェイン ・・・・・・となっている。それぞれの存在が死んだり、あるいはPCらがアスン・シオンの恩恵(?)を受けた後に彼らに近付いたりすると、これらのものが開放される。