第2部 審判
■概要
あれから1週間の時が経過した。
町はまだ破壊の爪あとは残っていたが、状況は落ち着いて活気を取り戻しつつあった。そんな時、町で集会が行われることになった。
何でも、この恐るべき災厄をもたらした“裏切り者”に裁きを下すと言うのだ。“裏切り者”とはいったい誰なのか?
そしてあなたたちはいったいどんな運命に見舞われるのか?
<第2部「審判」>
├01.「予知夢」 ├02.「復興」
├03.「V−1」★
├04.(C)「白い影」★ ├05.「使者」(D)
├06.「予言」
├07.「会見」 ├08.(D)「審判」
└09.〜次回予告〜C…シナリオフラグ【白い影】
D…シナリオフラグ【証人】
★…フラッシュフォワード使用可能
シーンPL:【予知能力者】
他のPCの登場:可
開始条件:第2部オープニング
終了条件:夢の続きを見ないことを選んだ場合、または<夢2>の最後のテキストを読み終えたら【予知能力者】は以下の夢を見ます。また、精神力を消費することで夢の続きを見ることも出来ます。キーパーは、少なくとも「夢1」だけは見せるようにしてください。その際最低でも精神力4点消費することになります。キーパーは夢1から順番に話して聞かせ
「夢の続きを見たいですか?」
と言ってPLの意志を確認してください。
<夢1>…精神力消費4
町の広場に大勢の人々が集まっている。
かがり火が炊かれている。
壇の上に修道士ラトボドウと【修道士見習い】が立っているのが見える。
人々が
「裏切り者め!」「裏切り者め!」
と連呼する。
マチルダが、衛兵に広場の中央へと引きずり出されるように引っ張り出される。<夢2>…精神力消費4
目を血走らせた狩人が血で真っ赤に濡れた斧を持って町を歩いている。
斧を分と振ると町人の首がスパッと跳ね飛ばされる正気度喪失1/1D6。
狩人はあなたを見るとニタリと笑い、駆け寄ってきて斧を振り下ろす
「回避」で判定する。失敗した場合は片腕を失いHP半減、SIZ−1。自動的に目覚める。目覚めると本当に腕を失っている。
<夢3>…精神力消費4
広場の女が口をあんぐりとあけながら空を指差す。
つられたように人々も空を見上げてぽかんとした表情をする
「あれは」
人々は空を指差す。
空に浮かび上がる楕円形の物体。正気度喪失0/1D3
「あれは神だ。…印が。」
その側面に描かれた鉤十字の紋章。
シーンPL:全員
他のPCの登場:可
開始条件:「01.予知夢」が終わったら
終了条件:マチルダがさらわれたのを確認したら。あれから1週間が経過して、村は復興作業が進んで落ち着きを取り戻しつつある。(領主の館は災厄から逃れたので一時的にそこに滞在している村人は多い。あるいはバラックのような小屋で過ごしているとか)
各PCがどのようにすごしているか確認すること。復興作業の手伝いをしているとか、ただぶらぶらしているとか何でもよい。ポイントとしてはPLがPCにマチルダの居所を確認させない限りマチルダがどこにいるかいっさい言及しないようにする。最後に誰かが気になって確認すると言ったら
そういえば、彼女はどこにも見当たらないね
と言って不敵な笑みを浮かべるように(笑)。
村人の噂で、なんでも今晩村の広場で集会が開かれるそうだよ。
議題は今度の惨事についてだとか。
シーンPL:「神の火」の残骸の調査をするPC
他のPCの登場:可
開始条件:PLの誰かが調査したいと言ったら
終了条件:残骸を発見したら。奇妙な継ぎ目のない金属の破片を発見する。
V-1(*1)
と書いてあるが「1」というのはアラビア数字であり、この時代のPCには理解不能である。SANチェックすること(0/1)。
<フラッシュフォワード>
破片に触れると、夜空の中、空を飛んで落ちていく情景を見ることができる。SANチェック(0/1)。
(*1)…「V−1」
第二次世界大戦時、ナチス・ドイツにおいて開発された兵器で巡航ミサイルの原型となった。Vとは報復兵器(フェルゲルトゥングスヴァッフェ、Vergeltungswaffen)を表す単語の頭文字である。
→V1飛行爆弾
シーンPL:ランダムで空いてるPCを選定
他のPCの登場:可
開始条件:シナリオフラグ【白い影】がある場合。
終了条件:事態が収集したら。村の猟師が斧を持ち
「ナチ(*2)の悪魔どもめ!死ね!」
と言って村人を殺して回る。SANチェック(0/1)。
やがて村の男たちに捕らえられ監禁される。捕らえられた時に猟師の口から何か白い影のようなものが抜け出て中空で消えるのに気付く。
SANチェック(0/1D3)。(*2)…「ナチ」
第二次世界大戦時にドイツを支配した政党。国家社会主義ドイツ労働者党。
→国家社会主義ドイツ労働者党<フラッシュフォワード>
猟師に触れると(斧で攻撃される危険あり)、
どこか石造りの部屋で大勢の人々が裸でひしめいており、遠くから
「シューシュー」(*3)
という音がし、ばたばた人が倒れていく。悲鳴と怒声が上がる。
「助けてくれ!」「助けてくれ!」
SANチェック(1/1D6)。CONx5で判定をし、失敗すると意識を失う。
(*3)…「シューシュー」
アウシュビッツのガス室の情景のつもり。
→アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所
シーンPL:マチルダのそばにいたPCのPLor【修道し見習い】or【領主の子】
他のPCの登場:不可
開始条件:適当に
終了条件:PC&マチルダが連れ去られたら。用意周到なPLの場合には村でこんな惨事があるとその原因としてマチルダが槍玉に挙げられ、魔女裁判のようなことが行われる、と予測し、彼女から離れないように気をつけるケースが考えられるが、それに対しては
オーベルトが屈強な大勢の男どもとともに現れた
と言って無理やり彼女をさらうように。判定を求められたらとても難しい判定を提示しよう。
加えて
「おまえもだ」
と言って【修道師見習い】も一緒に連れ去ること。PCに【修道師見習い】がいない場合は【領主の子】もしくは【狂った女の子供】を代役として連れて行くべし。
マチルダと【修道師見習い】は領主の館に連れ去られ、軟禁される。
軟禁されたPCにシナリオフラグD【証人】を与える。
シーンPL:【魔女】に会いに行こうと言ったPL
他のPCの登場:可(軟禁された人は除く)
開始条件:適当に
終了条件:魔女が言いたいことを言ったら。森に行くと「魔女」に会うことができる。
「まもなく“裏切り者”に審判が下される。」
「あの女はお前たちの仲間の言葉によって裁かれるだろう。」
「それから、まもなく“神”が現れる。あるいは、悪魔か。」
気付くと「魔女」の姿はなくなっている。SANチェック(0/1)。
シーンPL:軟禁されたPCに会いに行くPCのPL
他のPCの登場:可(軟禁された人は除く)
開始条件:夜になる前
終了条件:会談開始から30分が経過したか、会談が終了したら。マチルダに会うことはきわめて困難であるが、領主の館に潜入して軟禁されたPCと会見することは可能である(適当な技能で2回ほど判定すること。2回とも成功すれば会見できたことにする)。
何を話すかはPLに自由に。
よくある展開としては、夜の集会に騒ぎなど起こしてPC&マチルダをそこから脱出させる話なんかの打ち合わせをしたりなんかすることになるだろうか?
いずれにせよ30分経過すると夜の集会が始まり、軟禁されたPCは集会に引っ立てられていくことになる。
シーンPL:シナリオフラグD【証人】を持ったPCのPL
他のPCの登場:可
開始条件:夜
終了条件:事態が収拾したら。
村の広場にかがり火が炊かれ、村中の人々が集まっている。
やがて町の領主と、その妻と、修道士のラトボドウと【証人】が現れる。
領主は広場の中央の段に立ち、こう言う。
「今晩は重要な発表がある。此度の恐るべき惨事についての話だ。」
村人たちはざわざわと話を始める。「あの女のせいじゃないのか!?」と言う村人もらわれる。
領主は村人を制して言う「静粛に。こちらにおられるラトボウドウ殿が、こたびの件についてすべて説明してくださる。
その話によってすべてが明らかになるだろう」人々は静まり返る。
ラトボドウは段に立って咳払いをする。襟を正し、それから話し始める。
「今回の惨事では多くの家々が破壊され、作物が台無しになり、大勢の人々が死にました。死んだ方々の冥福を祈ります。黙祷を」
十字を切り目を閉じる。
「さて、みなさん方が興味があられるのは何故このような惨事がおきてしまったのか?その原因でしょう。その原因が取り除かれない限り、またこのような惨事が起きてしまうかもしれない。2年ほど前近隣の村のひとつで同じような事態が起き、その村は滅んでしまいました。幸い我々は生き延びることができました。しかし、2度とこのような事態を引き起こさないため、禍根を断つ必要があります。」
「私は領主様の命を受け、その原因を調査してまいりました。そして、その原因と思われるものを発見したのです。」
「その原因というのは、この村には恐るべき神の裏切り者がいた、ということです。
あれは、裏切り者への神の罰だったのだ。」
「では、裏切り者とはいったい誰なのか?」
ラトボドウが指差した先に衛兵たちに引っ立てられたマチルダが現れる。村人たちは「あの女が裏切り者じゃないのか?」「裏切りものめ!」という。【狂った女の子供】の姿を見ると「あいつはあの女の子供じゃないのか?」「あいつも裏切り者の仲間では?」というささやきが交わされる。
「それは、これから彼(彼女)が証言してくれます」
【証人】が段の上に引っ立てられる。
ラトボドウは耳打ちする。
『これから私が言うとおりに話すのだ』
以下、キーパーはひと言ひと言区切ってせりふを耳打ちし、PLに同じように復唱させること。PLが続けて言えなくなってしまった場合は代わりにラトボドウが話を続けるように。
『私は真実を話すことを神に誓います』
『【狂った女の子供】は神に誓って、あの女の子供ではありません』
『あの女は頭がおかしく、【狂った女の子供】を自分の子供と勘違いしているだけなのです』
『あの女は「子ヤギをその母の乳で煮てはならない」と言って【狂った女の子供】がミルクを飲むのをやめさせました』
『「子ヤギをその母の乳で煮てはならない」などという習慣は我々敬虔なキリスト教徒にはない習慣です』
『それは、裏切り者のユダの習慣なのです』
『あの女は「子ヤギをその母の乳で煮てはならない」と言って【狂った女の子供】がミルクを飲むのをやめさせました』
『それこそが「タルムード」というユダの邪悪な儀式なのです』
※正確にはこういう食習慣のことは「カシュルート」という。ユダヤの教えを理解するために対話/議論することを「タルムード」と呼ぶのは事実である。それは邪悪な儀式としてたびたび弾圧された。
『私はここに、あの女を、今度の惨事を引き起こしたユダの裏切り者として告発します』
広場は大騒ぎになる。衛兵たちによって手際よく木で作られた十字架にマチルダが縛り付けられ、薪が集められ彼女は火刑に処される。
途中で何らかの反論等があった場合はラトボドウはマチルダが着けた(飛行機の形をした)首飾りを指差して言う。
「あれこそが悪魔の印」
08-01.リアクション
以下が可能です。
1)何もせず見守る
彼女は処刑されます。【狂った女の子供】は、彼女に洗脳されそうになっただけで問題なしと判断されます(一応ラトボドウが弁護してくれる)。この場合はここでシナリオ終了がよいかな。→終了
2)騒ぎを起こして彼女を助け出す
これが一番スタンダードな選択ですかね。家畜を解き放って広場に誘導するとか、家々に火を放って回るとかいう手があります。いずれにせよやったら死刑確定なので生き延びたければ村から逃げ延びるしかありません。3)村人たちを説得する
何かいいネタを考えて村人たちをうまく説得して、彼女を裏切り者として処刑することは意味のないことであると納得させることができれば道は開けます。ネタとして考えられるのは以下でしょうか。・【予知能力者】こそが神の使いであり災いから逃れる道へと導いてくれる。彼女を処刑しても無駄なことである。というような方向に話の矛先を捻じ曲げる
・【領主の子】が、領主を説得し彼女を処刑しても無駄なことであると納得させる。(領主自身は悪い人ではないので、きちんと筋の通った説明をすれば納得してくれる可能性がある。ただし、それは継母が邪魔するので注意)
・【修道士見習い】が、宗教談義に持ち込んでキリスト教哲学的に彼女を処刑するのは不当であると説得する。(手としては「改宗させる」が有望かと)
騒ぎの中、村人の一人が空を指差した。
ほかの人々もつられるように見上げた。
修道士は言った。「おお……神よ」
空に浮かぶ巨大な楕円形の浮遊物。その側面には鉤十時の紋章が描かれていた。
一方村から離れ、逃避行を続けるPCたちもその虚空に浮かび上がるものに気付く。
マチルダはそれを見上げ、ため息をつくようにつぶやいた。「……ヒンデンブルク(*4)……」
クトゥルフ・ダーク・エイジ「サマータイム」第3回、「天空の翼」
時の狭間にあなたは何を見るのか?
つづく
(*4)…ヒンデンブルク
ドイツで開発されたツェッペリン飛行船のひとつ。
→ツェッペリン
→ヒンデンブルク号爆発事故