←←


 News Paper

192X.5.2.Mon◆謎の死

 5月1日の未明、かの有名なニコラス=
パーカー博士が、ノースサイドのハーディ
ングハウスの自室でむごたらしい殺され方
で発見された。
 発見したのはハーディング夫妻。
 朝やってきてみると部屋が血だらけにな
っており、その中に博士の遺体を発見した
ということである。
 死因は刺殺。
 死体にはさらに残虐に切り裂かれたあと
が残っていたそうである。
 また犯人は被害者の所持品をいくつか盗
み出していることがわかっており、そのこ
となどから頭のおかしい物盗りの犯行であ
ろうと警察は見ている。
ひとつ奇妙なことは、博士が死んだとき
に聖書の1ページをその手の中に握ってい
たという事実である。それは「ルカ伝」の
キリストが磔にされる部分であったという
ことで、博士自身の運命を暗示しているか
のようである。


192X.5.3.Tue ◆博士の死に関して

 博士の死に関して、死の際に持っていた
という「ルカ伝」のキリストの磔の場面と
いえば、かのせりふ「父よ、彼らをお赦し
ください。自分が何をしているか知らない
のです。」が有名なことは周知の事実でし
ょう。
 私は、信心深いとして有名な博士が、キ
リストの言葉を借りて哀れな物盗りをさと
したかったのではなかろうかと考えます。
それは、博士自身の慈悲深さの発露でしょ
う。そんな博士を残虐な手口で殺したこの
犯人に、わたしはとても憤りを感じます。
                     J.J


192X.5.10.Tue ◆連続殺人!?

 昨晩の5月9日の未明、イースト・パブ
リック・ハイスクール前においてイヴォン
ヌ=エマーソンなる女性の惨殺死体が発見
された。手口は喉を切り裂かれての刺殺、
そして恐ろしいことに内臓をえぐり出され
ていたということである。
 先日のニコラス=パーカー博士の死の状
況と酷似していることから、警察当局では
同一犯人の犯行の可能性もあるとして捜査
を進めている。
 もうひとつ奇妙な共通点は今度の被害者
も聖書の一節をその手に握っていたという
ことである。今回はヨハネ伝のキリストが
磔にされる場面であったということである。


◆謎の手紙

 当新聞社にサミュエル=ポーンなる人物
から手紙が5月9日に送られてきた。

"怪異なる存在の到来とともに 死が訪れる
『神聖なる黄褐色の蝋燭』に火が灯される
であろう

第1の贄:ニコラス=パーカー

第2の贄:イヴォンヌ=エマーソン

Samuel Pawn"


192X.5.18.Wed ◆第3の事件!

 昨晩の5月17日の未明、ジェンキン・
パブリック・ハイスクールのそばの路地で
当校の学生アリス=テイラーの惨殺死体が
発見された。
 手口は喉を切り裂かれての刺殺。そし
て恐ろしいことに内臓をえぐり出されてい
たということである。
 ニコラス=パーカー博士、イヴォンヌ=
エマーソン嬢の事件と死の状況が酷似して
いることから、警察当局では同一犯人によ
る犯行の可能性が高いとして捜査を進めている。
 また奇妙なことに、今度の被害者も聖書
の一節をその手に握っていたということである。


192X.5.19.Thu ◆第4の事件!!

 昨晩の5月18日の未明、アーカム燃料及
び石炭会社のそばの路地においてラルフ=
オーウェンなる人物の惨殺死体が発見され
た。手口は喉を切り裂かれての刺殺、そし
て恐ろしいことに内臓をえぐり出されてい
たということである。
 これまでの三つの「S.Pawn事件」
と死の状況が酷似していることから、警察
当局では同一犯人による犯行の可能性が
高いとして捜査を進めている。
 今回も奇妙なことに被害者が聖書の一節
をその手に握っていたということである。
今度のものはマタイ伝のキリストが磔にさ
れる場面のせりふ「わが神、わが神、なぜ
私をお見捨てになったのですか。(エリ、
エリ、レマサバクタニ。)」のタイプした
ものであったということである。


192X.5.19.Thu ◆またも手紙が!!

"第1の贄:ニコラス=パーカー

 第2の贄:イヴォンヌ=エマーソン

 第3の贄:アリス=テイラー

 第4の贄:ラルフ=オーウェン

            Samuel Pawn"

 上記の通りの手紙が当社まで送られてきた。
 鑑識によると、第2の事件の際に送られ
てきたものと同じタイプライターによって
打ったものであることが判明した。現場の
聖書の一節と共通するものかどうかは確認
されていない。


◆"雛"は一体何を目的にしているのか?

 今このアーカムを騒がせている「S.P
awn事件」に関して、当社の記者の入手
した情報として、被害者が必ず聖書の断片
を握っていたという共通点があります。
 厳密には第2の事件以降は聖書の中のキ
リストの言葉の引用したものが握られてい
たわけですが。
ということで警察当局の方から明らかに
された聖書の断片のリストをここで一挙に
公開します。
 ついては、この聖書の断片のリスト及び
「S.Pawn事件」に関して何か画期的
なアイデアを思いついたりした方は当社の
方へ意見を寄せられるようお願いいたします。

第1の事件
ルカ伝。キリストの磔の場面。
「父よ、彼らをお赦しください。自分が何を
しているか知らないのです。」(ルカ)

第2の事件
「婦人よ、ご覧なさい。あなたの子です。ヨ
ハネよ、これはあなたの母です。」(ヨハネ)

第3の事件
「はっきり言っておくが、あなたは今日、私
といっしょに楽園にいる。」(ルカ)

第4の事件
「エリ、エリ、レマサバクタニ。わが神、わ
が神、なぜ私をお見捨てになったのですか。」
(マタイ、マルコ)


192X.6.3.Fri ◆第5の事件!!

"第1の贄:ニコラス=パーカー

 第2の贄:イヴォンヌ=エマーソン

 第3の贄:アリス=テイラー

 第4の贄:ラルフ=オーウェン

 第5の贄:ローラ=ハミルトン

             Samuel Pawn"


◆聖書の断片に関する意見

 先日公表された被害者たちの握りしめてい
た聖書の断片に関して興味深いことに思い当
たりました。
 彼らの持っていたと思われる断片にはそれ
ぞれ必ずキリストの有名な言葉が含まれてい
ます。それは出展は異なりますが、その状況は、
キリストが磔にされてからの言葉です。これ
はもしかするとかの有名な『キリストの十字
架上の七つの言葉』からの引用ではないでし
ょうか。
 これまでの順番も、聖書に関する研究によ
って明らかにされた"最も信憑性のある"順番
に従っており、今回の事件でもそうでした。
 以上のようなことから、私は、この一見無
差別な連続殺人事件に何かひとつの象徴のよ
うなものがあると考えます。そしてそれは
『キリストの十字架上の七つの言葉』なので
はないでしょうか。
 そしてそのことはひとつのおそるべき結論
を導き出すと考えられます。つまり、『サミ
ュエル=ポーンなる殺人鬼は、七人の生け贄
を欲しているのではなかろうか』ということです。
 それを裏付けるもうひとつの暗示がありま
す。第1の事件は5月1日の日曜日、第2が
5月9日月曜日、第3は5月17日火曜日、第
4は5月18日の水曜日、第5が6月2日の木
曜日に起こっています。これは偶然でしょう
か?私は明らかに犯人が曜日の順番通りに犯
行を行っていると考えます。彼は「創世記」
のように、すべてを日曜日に始め、土曜日に
終わらせようとしているのではないでしょう
か。神の如くにです。
 以上のことから、犯人はあと二人の犠牲者
を出すまで犯行を繰り返すであろうと、そし
て次の犯行はいつかは定かではありませんが
「金曜日」に行われるであろうことを予測します。
                     C.A.T


◆「S.Pawn事件」に関して

 先日の聖書の断片及び犯行の曜日に関する
分析に関して、私も同感です。
 私の意見は、そういった"象徴性"にこだわ
る犯人というのは、この連続殺人を儀式のた
めの生け贄の儀式と考えているのでしょう。
当新聞社への毎回の手紙もそのことを物語っ
ています。そして私が特に信心深いというわ
けでもありませんが、こういった聖書に対す
る冒涜的な認識からみて、犯人はおそらく反
キリスト教的な考えの持ち主なのではないで
しょうか。
 そこで私は反キリスト教分子、あるいは
そういった宗教団体の中の特に不穏な人物に
対して一度調査すべきだと考えます。
                       H.A


◆第6の事件!!

"第1の贄:ニコラス=パーカー

 第2の贄:イヴォンヌ=エマーソン

 第3の贄:アリス=テイラー

 第4の贄:ラルフ=オーウェン

 第5の贄:ローラ=ハミルトン

 第6の贄:アーノルド=トムキンス

          Samuel Pawn"


◆事件現場に関する意見

 先日のC.A.T.氏の犯行曜日および
犠牲者の人数に関する卓越した意見には感
服しました。
 さて、わたしも彼の「犠牲者7人説」に
は賛成で、先日手に入れたアーカムの地図
でこれまでの事件がどこで起こったか印を
付けてみました。そうしてそれらの点によ
って描かれる形に何か意味はないであろう
かと考えてみたわけです。
 第1、3、4の事件現場はかなり接近し
ているので、1つの点として見てみること
にしました。すると、第2の事件をのぞい
てほぼ一直線上に現場が並んでいることが
わかります。2の事件だけはそのラインか
ら大きくはずれています。また第5の事件
は微妙な位置にあって2の事件現場と線を
結んでみると、その線は最初に引いたライ
ンとほぼ直角に交差することがわかります。
 この第5の事件に何か意味があるのだろ
うか?私は考えました。
 第5の事件の特徴は、最初の事件をのぞ
いて唯一現場が屋内であること、犠牲者が
車椅子でしか動けない障害を持った人であ
ったことがあげられるでしょう。
 このことに意味はあるのか?
 私は"足が動けない"という言葉にピーン
ときました。この第5の事件現場は、犠牲
者が動けないせいで、もし犯人が最初から
彼女を犠牲者として選んでいたとするなら
ば、まず、確実に"固定された"現場であっ
たと言えるのではないでしょうか。あのよ
うな障害を持った人がそうそう外出などす
るはずがありません。ましてや女性です。
 つまり、犯人にとって第5の事件現場は
まず移動の可能性のない、不動の中心とな
る点であったと言えるかと思います。
 さて、そういった推論をもとに再び地図
を見てみます。今度は、第7の現場をどこ
にしたら5の現場を中心としたような意味
のある図形ができあがるかを考慮しながらです。
 すぐにピーンとわかるものがありました。
試しに第7の現場を病院あたりにしてみます。
するとどうでしょう。きれいな"逆十字"が
地図の上に描かれるではありませんか!そ
してこれは、H.A氏の指摘した「キリス
ト教に対して冒涜的である」という犯人像
にぴったり一致する図形ではありませんか!
以上のことから私はふたつのことを指摘
し、警察に対しての要望をします。
 第1に、次の事件はおそらく聖メアリー
病院付近のキャンパス地区あたりで起こる
であろうこと。警察はその地域の警戒を重
点的に(特に土曜日に)行うようにした方
がいいと思います。
 第2に、以上の論から犯人は、第5の犠
牲者、ローラ=ハミルトンに関しては、少
なくとも最初からこの連続殺人の計画の中
に入れていた可能性が濃厚だと思われます。
もしかすると他の事件はその現場の位置だ
けが重要であったのかもしれません。そう
いうことから、犯人はローラ=ハミルトン
と何らかの関連のある人物であろうと推測
することができます。ですから、ぜひ、彼
女の人間関係等を洗い直すべきだと私は信
じます。
               J.J


◆第7の事件!!

 連続殺人の終了か?

"第1の贄:ニコラス=パーカー

 第2の贄:イヴォンヌ=エマーソン

 第3の贄:アリス=テイラー

 第4の贄:ラルフ=オーウェン

 第5の贄:ローラ=ハミルトン

 第6の贄:アーノルド=トムキンス

 第7の贄:トーマス=アレキサンダー

            Samuel Pawn"

 曜日に関する例の意見は、厳密には最後は
はずれてしまったが(予想なら土曜日に起こ
るはずが、日曜日であったこと)、聖書の断
片に関しては完全に予想通りの展開であった。
"雛"がもうこれ以上の犯行を犯さないこと、
そして警察が一刻も早く犯人を逮捕してくれ
ることに期待したい。


◆またまた残虐な死!便乗殺人?(第8の事件)


◆悪魔の犯行?便乗殺人?

 第9の事件か?

"第1の贄:ニコラス=パーカー

 第2の贄:イヴォンヌ=エマーソン

 第3の贄:アリス=テイラー

 第4の贄:ラルフ=オーウェン

 第5の贄:ローラ=ハミルトン

 第6の贄:アーノルド=トムキンス

 第7の贄:トーマス=アレキサンダー

 第8の贄:ハワード=ラファティ

 第9の贄:オリヴィア=ランプトン

          Samuel Pawn"


◆同一犯人による犯行は確実視!?

 鑑識によると、被害者のそばにあった『ナ
ンバー』が、同一人物の筆跡である可能性が
高いことが確認された。当新聞社に送られて
きた"雛"の手紙に使用されたタイプライター
がすべて同じものであり、それが事件の犯人
の手による可能性が高いことなども確認され、
警察は同一犯人による犯行として捜査を続行
することを決定した。


◆自警団発足


◆銃器の大量購入


◆第10の事件!!


◆第11の事件!!


◆犯行終了宣言?

"『神聖なる黄褐色の蝋燭』に火が灯され、
 すべての贄の名は刻まれた

 第1の贄:ニコラス=パーカー

 第2の贄:イヴォンヌ=エマーソン

 第3の贄:アリス=テイラー

 第4の贄:ラルフ=オーウェン

 第5の贄:ローラ=ハミルトン

 第6の贄:アーノルド=トムキンス

 第7の贄:トーマス=アレキサンダー

 第8の贄:ハワード=ラファティ

 第9の贄:オリヴィア=ランプトン

 第10の贄:テレサ=オールモンド

 第11の贄:エドワード=ヤング

 第12の贄:ピーター=ノースラップ

             Samuel.Pawn"


↑↑